第百六十章 「ワイルドフラワー」使役獣獲得事情 5.続行
「ねぇリーダー、これってチェーンクエストだと思う?」
「どうだろう……確かにチェンクエっぽくはあるけど……どっちにしろ、普通のクエとは違ってる気はする」
「ん。さっき確認したけど、召喚リストにハイディフォックスが載ってなかった。イベントが特殊なのか、パピィが特殊なのか。どっちにしても普通じゃない」
「うわぁ……マジ?」
「ん、マジ」
召喚術師が召喚できるモンスターや動物は、基本的に倒した事のある、少なくとも出会った事のあるものが対象となって、リストに記載されてゆくようになっている。
ハイディフォックスは姿を消して襲ってくる狐で、その毛皮は二万G前後で取引されているくらいだから、冒険者ギルドでも討伐の対象になっている。トンの町のフィールドにも出ると言うし、実際にシュウイなどは討伐経験があるそうだが、偶々「ワイルドフラワー」は出会った事が無かった……今回までは。
本来であれば、子供とは言えパピィに出会った事によって、召喚可能リストに記載されて然るべきなのだが、それが載っていなかったという事は……
「やっぱ何か、特殊なルートに踏み込んでる可能性がある訳かぁ……」
本来なら、ナンの町で留守番している二人――と、その使役獣――とも合流の上で事に当たるのがベストなのだろうが……
「ナンの町を留守にするのは駄目だって、メイビーさんに言われてるし……」
「未契約者三人だけで動いていたのがトリガーなのかもしれないって、そう言われるとねぇ……」
クリフト夫妻からの情報提供を受けて、エリンは直ちにカナとセンに連絡を取った。直ぐに合流するのは――フランセスカから釘を刺されている事もあり――難しいとしても、日を改めてフルメンバーで向かうべきではないだろうか。
しかし、暫し考えていたカナの答えは、この機を逃さず三人だけで行動すべきというものであった。
これが何かのクエストだとしたら、タイムリミットが存在している可能性が高い。それに抑、〝スキルだけ持っていて使役獣と契約していない者〟だけが行動しているというのが、何かのトリガーになったかもしれないではないか。ここでその流れを断ち切るのはあまりにも惜しい。
ついでに言うとカナからは、
〝「パピィ」という英単語は確か、キツネやオットセイなどの幼獣に対しても使われた筈よ〟
――というトリビアも頂戴したが。
それを聞かされたサフランは、〝オットセイ……〟と呟いて微妙な顔をしていたから、キツネで良かったと思うべきなのだろう。
・・・・・・・・
「さて……クリフトさんに教えてもらったのは、この辺りの筈なんだけど……」
「クリフトさんも直接行った事は無いって言ってたもんね」
「ん、又聞き」
「それも気になると言えば気になるのよね……」
仮にこれがチェーンクエストだとしても、そこに〝又聞き〟という設定を入れる必然性があるのか?
逆に必然性があるとするなら、それは真実〝又聞き〟であり、
「少なくとも住民の間には、そこそこ拡がってる噂……って事になるのよね」
「なのにあたしたちプレイヤーは、その話を聞いた事が無い」
「クエストを受けたプレイヤーが秘密にしてるって可能性はあるけど……」
「あたしたちがこの話を耳にしたって事は、これが未発のクエストか、でなきゃリピータブルクエストという事。後者ならそこまで隠す理由が無いから、これは未発見のクエストという事になる。つまり最初の問いに戻る」
「カナは〝ナンの町半壊の余波じゃないか〟って言ってたけど」
「プレイヤーのほとんどが、そっちにかかりっきりになってたもんねぇ……」
「ん、あり得る話だと思う」
だとするとこの「クエスト」(仮)は、本来ならもっと早くに発見されていた筈だという事になり、それはつまり経験の浅いプレイヤーが対象だったという事で……
「そこまで難度の高いクエストじゃない筈――って、カナは言うんだけどね」
「けど、そうすると……」
「ん。パピィの特殊性に鑑みると、今度はチェーンクエストかどうかが怪しくなる」
「状況的には限りなくチェンクエっぽいんだけどねぇ……」




