第百六十章 「ワイルドフラワー」使役獣獲得事情 4.続行?
さて――三人のうちの一人だけ、それも戦闘には向きそうにない「子犬(仮)」であるが、取り敢えず召喚獣をお迎えする事はできた。後はクリフト夫妻が営むという牧場に向かい、そこで上質肥料というのを分けてもらえばいい。
……漠然とそう考えていた三人であったが、スケジュールの遅延に不満を抱く管理AIは、飛んで火に入る三人娘を逃す気はさらさら無かったようだ。
召喚時間が長いほど、【召喚】のスキルも召喚獣も、共にレベルアップし易くなるという「ゲームあるある」に従って、サフランはパピィを抱いたまま、目的地であるクリフト牧場に向かったのであったが……
「おや珍しい、ハイディフォックスの子供かい?」
クリフト牧場に到着して、牧場主のクリフト夫妻に取り次ぎを請うたところ、三人が挨拶するより早くそんな事を言われたものだから、三人は一瞬動きを止めた。
「ハイディフォックス」とはどういう事だ? 召喚主たるサフランのステータス画面では、種族不明となっていた筈だが?
「ん? 違うのかい?」
「いえ――はい……そうです」
慌ててステータス画面を開いたサフランが確認したら……何と、いつの間にやらパピィの種族が「ハイディフォックス」となっていた。
理由が解らず混乱したが、どうせこれは不思議世界のゲームなんだからと、割り切る事にしたようだ。リアルでは女子大生であるサフラン、こういうところは中々ドライ。他の二人もサフランを見習う事にしたようだ。だって召喚主が動じてないのに、外野が慌ててどうするよ。
何はともあれ、「ハイディフォックス」とやらにも詳しそうだし、ここはクリフト夫妻の話を聴くのが良いだろう。
・・・・・・・・
「ハイディフォックスは毛皮目当てに狩られる事が多いがね、ネズミを捕まえてくれるんで、我々のような農家にとっては益獣なんだよ。本音としては狩ってほしくないんだが、他人様の生業に口を出すのもねぇ……」
「はぁ……」
ギルドで依頼を受ける時、そんな事までは考えてなかったという顔の三人。
しかし、考えてみればあり得る話だ。現実世界でも似たような問題はあったではないか。
仮想世界に現実世界のイザコザを持ち込むのは興醒めだという意見も多かろうが、あの悪辣な運営の事だ、小さな罠として採用するぐらいの事は考えるべきだったか。
「まぁそんな訳でね、ハイディフォックスの子供を助けてくれたあんた方と、最初にこの子を助けてくれたっていう冒険者にも、悪い気持ちは持てないんだよ」
上質肥料の譲渡を快諾してくれた背景には、そんな住民感情もあったようだ。思わぬところで農民からの好感度を上昇させた形である。
しかし……
(「リーダー……これってさぁ、もしも狼の被害を受けたばかりの農場とかに連れてってたら、狼と認定されて好感度が下がったって事?」)
(「ありそうな話だね……」)
(「ん。その場合、害獣認定された狼の方も、農民に悪感情を抱いたかも」)
(「……それもありそうな話だね」)
(「うわぁ……」)
(「まぁ、開発側に『モフモフの守護者』を自認する一派がいる以上、あまり酷い展開は認められないと思うけど」)
……などと、三人が密かに頭を抱えているなどとは気にも留めない様子のクリフト氏。続けてこんな事を言い出した。
「そう言えば……これも縁ってやつなのかねぇ……」
「……はい?」
「いやぁね。知り合いの農家から聞いた話なんだが……何でもこの近くに、犬たちが落ち着かなくなる場所があるっていうんだよ。冒険者だっていうあんたたちなら、何か考えがあるかもって思ってね」




