第百六十章 「ワイルドフラワー」使役獣獲得事情 3.契約
今回解らないネタは、(生)温かい目でスルーして戴けると助かります。
目の前にいるモンスターと契約するのに【召喚】の魔法が使えるのか……という問題は、既にシュウイがマハラと契約し、次いで他ならぬ「ワイルドフラワー」の面々が、サンチェスと契約の運試しをした事で解答が得られている。時と場合――恐らくは契約対象の同意が得られた時――によるのだろうが、少なくとも不可能ではないのである。
況して今の自分たちは、使役獣を探すという目的を抱いた身。躊躇う理由などどこにも無い!
という訳で三人が、〝いっせーの……せ!〟……ではなく、
「【馴致】!」「「【召喚】!」」
――と、声を揃えて契約を申し出ると、傷付いていた身体が光に覆われ……光が収まった時には、すっかり傷の癒えた様子の子犬(仮)が嬉しそうに尻尾を振って、キャンキャンと吠えていた……サフランに向かって。
「あー……契約できたのはサフランかぁ……」
「残念。けど、助かったのは喜ばしい」
それまで意外な展開にポカンとしていた冒険者の二人組も、小動物が助かった事は理解できたらしい。
「……助かったのか、その犬っころ」
「小父さん、この子『パピィ』っていうの?」
「え? いや――拾ったばかりだし、名前なんか付けてねぇよ。犬っころだからそう呼んでるだけで……」
「子犬をして『パピィ』呼ばわりとは安直じゃのぉ」
「放っとけ!」
「うーん……折角だからこの子の名前、『パピィ』にする。宜しくね、パピィ!」
「キャン!」
仄々とした一幕芝居に目を細めていたエリンとミモザであったが、そう言えば使役獣は、名前を付ける事で契約が正式に完了し、ステータス画面に登録されるんだったと思い出す。ここはキチンと確認しておいた方が良いだろう。
そう指摘したところ、舞い上がっていたサフランもそれはそうだと納得し、ステータス画面を開いたのであるが……
「――!? ……??」
「……どうしたのさ?」
唯ならぬ様子のサフランに、「ワイルドフラワー」リーダーのエリンが問いかけるが、サフランはその問いには答えず、
「……小父さん、〝パピィ〟って呼んでたからには……この子、子犬なのよね?」
「え? いや、見た目犬っころみてぇだからそう呼んでたんだが……違うのか?」
「何か……種族の欄が〝○○○の子供〟になってるの……」
「「「「――はぁっ!?」」」」
一同困惑はしたものの、契約は恙無く完了したのだし、契約自体にも不満は無いしで、この場で深く追及するのは止そうという事になった。何かパピィも不安そうな表情を浮かべているし、子犬の情操教育上も宜しくない。
「大丈夫! キミはもうあたしのパートナーだからね!」
「キャン!」
ご機嫌そのものといった体の、あの二名は放って置くとして――
「俺はストロングってもんだ。ナンの町で冒険者をやってる」
「儂はアリ・ハバという老い耄れじゃ。この若造と組んで冒険者をやっとる、しがない魔術師じゃよ」
「ヒゲもじゃのアリ・ハバだから、略してモジャハバって呼んでるやつも多いけどな」
「……お前さん方はアリ爺と呼んでくれればいい」
「あ、あたしたちは『ワイルドフラワー』っていうパーティを組んでます。他に二人いるんですけど、一応あたしがパーティのリーダーという事になってます。エリンです」
「同じく、ミモザ。私も召喚獣募集中。宜しく」
「お、おぅ。宜しくな」
サフランのリアルネームは榎崎久理子といいます。スウェーデンの血の入ったクォーターで、祖父母からはクリスと呼ばれています。――今決めました。




