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第三章 トンの町 2.戦利品

PKは主人公によって美味しい獲物と認定されたようです。

 PK連中から戴いた装備を抱えてトンの町に戻った僕は、入口の所で門番さんに呼び止められた。うん。武器を一山抱えて町に入ろうとしていたら、そりゃ不審に思われるよね。マントなど(かさ)()るものやPKたちのアイテムバッグ、それに細々(こまごま)して落としやすそうなものを全て僕のアイテムバッグに収納したら、武器類が入らなくなったんだよ。


「……なるほど。君を殺そうとして襲ってきた連中を返り討ちにした(わけ)か」

「はい」

「悪いが、ギルドカードを見せてもらっていいかな?」


 ギルドカードを見ると、犯罪歴の有無などが判るらしいので、素直にカードを渡す。正当防衛がどう表示されるのか、僕も知っておきたいしね。


「……君の申告どおりのようだな。正当防衛の結果得られたものだと証明された。従って持ち込むのは構わないんだが……(いささ)か目立つんじゃないかね?」


 うん。弓三張り、矢筒三本、長剣三振り、短剣五本、毒の入った(びん)一個、その他暗器類の包みが一つ……ちょっとした死の商人だよね。


「……どうしたらいいでしょうか?」


 思案に困って相談すると、門番さんは門番小屋の中から大きめの布袋を持って来てくれた。


「この袋を貸しておくから、中に突っ込んでおくといい。少しは穏便な見かけになるだろう」

「済みません。しばらくお借りします」

「なに。住民に不安を与えないのが番人の務めだからな」


 門番さんから借りた袋に装備一式を入れて、先にタクマに聞いた道具屋に行く事にする。こんなものを抱えてギルドに行けば、また面倒を背負(しょ)()む事になりそうだしね……いや、それはそれで美味しいか?


 昨日のPvPの収益を考えると、それでもいいかという気になる。だけど、やっぱり先に道具屋に行く事にした。誰も喧嘩を売ってくれなかったら、悪目立ちするだけだしね。


 確か、「ナントの道具屋」って看板がある筈……あそこか。β版のテストプレイヤーで、β版で稼いだ資金を元に開店したって聞いてるけど……。


「御免下さ~い」

「はいよ~」


 ナントさんは若い獣人の男性だった。



・・・・・・・・



「ふ~ん、PKのドロップ品ねぇ」

「お疑いなら、門番さんに聞いてもらえますか」

「いや、疑ってる(わけ)じゃないよ。ただ、タクマに聞いたとおり規格外だと思ってねぇ……」


 ……おや?


「タクマが何か話したんですか?」

「あぁ。何か面倒なスキルを背負(しょ)()んでるみたいだから、店に来たら相談に乗ってくれって頼まれたよ」


 あいつ……。


「しかし……これって装備一式丸ごとだよね? そのPKたち、ほとんど身一つで死に戻ったんじゃないかい?」

「……返却する必要があるでしょうか?」

「無い無い。犯罪者の遺品は討伐者のものさ……さすがに身ぐるみ一切ってのは初耳だけど……問題は無い筈だよ」

「じゃぁ、買い取ってもらえますか」

「うん。だけど、この毒瓶(どくびん)はちょっとうちじゃぁ扱えないな。買い取ってくれそうなところはあるけど……一応ギルドに相談した方がいいと思うよ」

「解りました。そうします」


 アイテムバッグに吹き矢と手裏剣、バグ・ナクは売らないでおくか。


「それじゃあ……毒瓶(どくびん)以外の装備一式で……端数は切り上げて十二万二千五百Gになるけど、それでいい?」

「はい♪」


 おお……大金だ。あのPKども、結構良い物使ってたんだね。連中の所持金が三人分合わせて十三万弱だったから、今日だけで二十五万近い金額が手に入った(わけ)だ。ゲーム開始時の所持金千Gとは、天と地ほどの開きがあるよね。


 ……やっぱりPKって、美味しい獲物だよねぇ……。



・・・・・・・・



「……あぁ、お前が殺し屋――お前たちがPKとか呼んでいるやつら――を返り討ちにしたのは解った。ギルドカードの記録にもあるしな」


 冒険者ギルドに薬草を届けて依頼完了の手続きを終えた後で、PKから取り上げた毒瓶の処分について職員の人に尋ねたところ、なぜか冒険者ギルドのギルドマスターの部屋に連れてこられた。その部屋で、僕は今ギルドマスターと面談していた。


「で、こいつはその殺し屋(PK)連中から取り上げたっていうんだな?」

「はい。何か問題でも?」

「大ありだ。こいつぁ本来なら、王城の奥にでもしまい込まれていなくちゃならんような危険物なんだ。まったく、『異邦人』ってなぁ厄介な連中だぜ……」


 そう言うと、ギルドマスターは気がついたように僕の方を向いた。


「そういやぁお(めえ)も『異邦人』だったな。気を悪くしたんなら謝る」

「いえ。同郷のものがご迷惑をおかけしています」

「いや、まぁ……今のところこっちの連中が毒にやられたってなぁ聞いて()ぇからいいんだが……。それより、こいつぁギルドの方に処分を任せてもらえるんだな?」

「はい。どうせ僕の手には余りますし」

「助かる。依頼達成の(こう)()にはちょいとばかり色をつけておこう」


 おぉ……ありがたい話だね。


「しかし、見れば薬草の採集ばかり請け負っているみてぇだが……ギルドとしちゃあ、お(めえ)みてぇに活きの()いのには討伐依頼を受けて欲しいところなんだが……」

「あ~、ちょっと特殊な事情がありまして、基礎的なスキルを全く取れていないんですよ。なので、そっちがどうにかなるまでは、無理をしたくないんです」

「何だ、(わけ)ありか? まぁ、そういう事なら無理強いはしねぇが」

「あは、済みません」

本日はあと三話ほど更新の予定です。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 無理をしたくないのなら何で弱いモンスターを調べて、討伐しようとしないんですか? 明らかに格上の、何をしてくるのかも分からないようなPK達を狙うよりも、強さも攻撃も確定しているような弱い…
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