第百六十章 「ワイルドフラワー」使役獣獲得事情 2.邂逅
「えーと……こっちで合ってるんだっけ?」
「ん。町外れの牧場だって言ってた」
「クリフトさんご夫婦だったよね? 肥料を譲ってもらえる相手」
結局あの後、「ワイルドフラワー」は二手に分かれて動く事にした。既に使役獣と契約しているカナとセンが留守番組、未契約のエリン・サフラン・ミモザの三人がお使い組である。
フランセスカ(=メイビー)の教えてくれた道順に従って歩いて行くと……
「……あれ、何?」
「何だか急いでこっちへ来てるみたいだけど……」
「何かのイベント? それともクエスト?」
妙に慌てた様子の男二人が、何かを抱えて急ぎ足でこっちへ向かって来る。
その片割れは逆三角形の上半身を持つ、〝筋骨隆々〟という言葉を体現したかのような大男。もう一人はそれよりはずっと小柄な、こちらは〝枯れ木のような〟という形容が似合いそうな、白髪に白ヒゲ、浅黒い肌の老人であった。ちなみに〝何か〟を抱えているのは大男の方で、老人はその何かを心配そうに見遣っている。
……と、いうような様子が見て取れる距離まで近付いたところで、向こうもこっちの存在に気付いたらしい。
「おぉ~い! あんたら、異邦人か!?」
〝異邦人〟が〝プレイヤー〟を指す語だという事は承知している三人、互いに顔を見合わせたが、別に隠す事でもないだろうと頷きを返す。異邦人だとしたら何だと言うのだ。
「中級のポーションか何か持ってねぇか!?」
「中級ポーション!?」
最下級でも初級でもなく中級ポーションが必要というのは、これはただ事ではなさそうだ。見れば何か小さなものを大事そうに抱えているし……まさか病気の子供でも?
焦った三人が駆け寄った先で見たものは……
「……犬? いや狼?」
「かわい~……って、酷い怪我!」
「どうしたんですか?」
「あぁ、いやな……」
男二人が交々に説明したところに拠ると、二人はナンの町の冒険者で、依頼を受けて山へ向かって行った先で、コレを見つけたのだと言う。
「親とはぐれでもしたのか、腹を空かせてたみたいなんでな。弁当の切れっ端を恵んでやったのよ」
「柄にもない仏心というやつじゃな」
「……したら何だか懐いちまってな。追っ払うのも面倒なんで、そのまま放っといたんだが……」
「生憎とその先で、討伐依頼のモンスターに出会してのぉ……」
モンスター自体は無事討伐したのだが、その最中に、子供ながらも健気にモンスターに立ち向かっていた子犬(?)が、モンスターの爪を受けて大怪我をしたのだという。
行き掛かり上放っても置けず、手持ちの下級ポーションを振り掛けてみても一向に効果が見えず、大慌てで引き返して来たのだという。
もし手持ちの中級ポーションがあるのなら、代金は必ず払うので融通してほしい――と嘆願する二人であったが……三人の方はそれどころではなかった。
何しろ……
《傷付いた小動物を救うには、プレイヤーが契約するしかありません。契約しますか? Y/M》
……というウィンドウが、三人それぞれの前にポップしているのである。
そう……従魔術師と召喚術師の三人の前に。




