第百五十九章 その頃の瑞葉 2.行動する瑞葉
彼女にとっても鉢植えにとっても幸いな事に、先に何も植わっていない植木鉢を対象に試験してみる程度の分別は瑞葉にもあった。その結果、確かにスペースはできたのだが……
「うわ……土がガチガチに締まって煉瓦みたいになってる。……だめだこれ」
――この辺りから瑞葉の思考は暴走を始める。
「え~と……土をギチギチに詰めるのはNGなんだから……要はゆったりとした生育スペースを確保しつつ、それでいて場所を取らない植木鉢があればいいんだよね」
――そんな都合の好いモノは無い!
……と、声を大にして断言したいところなのだが……何しろここはSROの中。ユーザーの夢とロマンを詰め込んで創られたヴァーチャル世界である。そんな憧れ一杯・夢一杯の代物だって、ひょっとしたらあるかもしれないではないか。……どこかに、こっそりと。
「えーと……条件に合いそうなのは……アイテムバッグかな?」
大量の荷物を収納しても、体積も重量も変わらない。……成る程、瑞葉の求める条件に合致してはいる。
「大抵のラノベとかだと、生き物は収納できないっていう縛りがあった筈だけど……SROはその辺、判らないからなぁ……」
まず大前提として、アイテムバッグに培養土を入れて、植える状況を作れるのか。そこから試してみようと考えた。
ものは試しと土を入れてみたところが……
「〝土が一山〟って……多分コレじゃないわよね」
入るには入ったのだが、どうも望みの状況とは違うようだ。この分では苗を入れたところで、〝枝が一本〟とか〝草が一束〟と表示されて終わりのような気がする――犇々と。
「……うん! アイテムバッグじゃ大き過ぎるのよね。もう少し小さなものじゃないと」
……少しピントがズレているような気もするが、問題点の一つには違い無い。
「つまり……必要なのはもっと小さなアイテムバッグ。何なら〝失敗作〟って言われてるようなものこそ必要よね」
傍から見ると些かおかしな結論ではあるが、少なくとも検証可能な作業仮説が出て来た事で、瑞葉の行動に指針が与えられる。……それが良い事かどうかはさて措いて。
そして――確かめるべき要点がはっきりした事で、ご近所からの情報収集にも弾みが付く。
何せリアルで対人恐怖症を拗らせた結果、NPCとの付き合いに逃げ道を見出したのが瑞葉である。住民の知人の数なら、シュウイとタメを張れるか上回るのだ。
この時も住民の奥様ネットワークを存分以上に活用して、運営が――恐らくは今暫く――伏せておきたかったであろう情報をあっさりと訊き出していた。
「――え? 古道具屋さん……ですか?」
「あぁ、そうさ。あんたの言うようなガラクタを探そうってんなら、行くべきは真っ当な店じゃない。ポンコツを商ってる古道具屋だね」
「あたしらも時々行くんだけどね。偶に掘り出し物があるから侮れないんだよねー」
「そぅそぅ。まぁ大抵は、箸にも棒にもかからないポンコツだけどね」
「場所を教えたげるから、行ってみちゃどうだい?」
「有り難うございます! 行ってみます!」
ママ友たちに嗾された瑞葉のせいで、SROのキー・スポットの一つがひっそりと開放された事、そして瑞葉がそこで〝【劣化アイテムボックス】のスキルオーブ〟という売れ残りの不良品――の体を取った爆弾アイテム――を入手して、運営側に悲憤慷慨の嵐をもたらすのは、もう少し先の事であった。




