第百五十八章 人形遣いと少年~カンチャン村道中異変~ 7.虜囚解放作戦(笑)~顛末~(その2)
ちなみにシュウイが受け取った報酬は、ナワッキーのスキルの全て及びステータスの一部を没収した――シュウイ的には寧ろこっちの方が本命――のを別にして、
《ペンチャン村とカンチャン村の村人の好感度が上昇しました!》
《カンチャン村および技芸神の神殿の衛兵の好感度が少し上昇しました!》
《領主・イストバーグ伯爵からの好感度が少し上昇しました!》
――というものであった。どうやら治安の維持に貢献したという事で、住民のみならず為政者サイドからの好感度も上がっているようだ。
ちなみに、護送隊の護衛をペンチャン村が正式な依頼にしてくれたお蔭で、冒険者としての評価ポイントも少し上がる事になったようだ。後で冒険者ギルドに行って確認してくれと言われた。
シュウイも少し驚いたのだが、カンチャン村には――技芸神の神殿の門前村という性格の故か――冒険者ギルドの出張所があった。主な仕事は護衛依頼の斡旋だと聞いて、シュウイたちも納得したのであったが。
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そんなこんなの話をエンジュやモックと交わしていた時、〝そう言えば……〟と、エンジュが切り出した素朴な問いが、シュウイの心の平穏を破る事になる。
「あの少し前に、先輩が待ち伏せの事を察知したのって、何かのスキルなんですか?」
「え? 駆け出しの行商人っぽい少年が教えてくれたじゃん? 二人だって見てただろ?」
「はい……?」
「……少年?」
「――え?」
不審に思った三人が互いの認識を摺り合わせた結果、(シュウイにとって)驚愕の事実が判明する。
――シュウイに待ち伏せの事を教えてくれた「少年」の姿が、シュウイ以外には見えていなかったという事が。
「何も無い空間に向かって話しかけていたから、何かのスキルで誰かと通信してるんだろうな――って思ってました」
あっけらかんと言うエンジュ、その隣でウンウンと頷いているモックを見て、これが冗談でも何でもないと解るにつれて、シュウイの顔から血の気が引いて行く。
(だって……それじゃまるであの少年が……)
「幽霊」のようではないか――と思った直後、不意にシュウイは自分の持つ称号の事を思い出す。
――今まで敢えて気にしないよう努めてきた、『霊魂の友』という称号の事を。
……アレの効果は確か、〝霊魂からの好感度が上昇し、様々な便宜を図ってもらえるようになる〟――というものではなかったか?
実はその他にも、霊魂に対する恐怖や嫌悪の低減という――シュウイにとって――ありがたい効果もあるのだが、当のシュウイはこんな称号見るのも嫌だったので、説明を読んでいなかったりする。
ともあれ、彼の「少年」は実はこの世の者ではなかったのだ――と気付いたシュウイは、あわや悲鳴を上げそうになったが……すんでのところで思い止まった。
厚意から危険を教えてくれた恩人(?)に対して、それはあまりに礼を失した行ないではないか。
(……ま、まぁ……生臭い風も、ヒュ~ドロドロという効果音も無かったし……何より、そんな怖い感じもしなかったんだし……)
荊棘に髪を振り乱し、掌をダラリと前に出したあのポーズで「う・ら・め・し・やぁぁ~」などと言われた訳でもないのだ。善意に対しては感謝を以て報いるべきであろう。
正直今でも怖いには怖いが、件の少年の素性を調べて菩提を弔うぐらいの事はするべきだろう……と、健気な決意を新たにするシュウイなのであった。
今回の章タイトルを思い付いた事で幽霊の年齢が予定より若くなったのは、ここだけの話です。……恐らく一部の方にしか解らないと思いますが。




