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第百五十八章 人形遣いと少年~カンチャン村道中異変~ 3.虜囚解放作戦(笑)~開幕~(その1)

 〝善良な駆け出し行商人(こども)〟に教えられたとおり、山道の角を曲がった先では、こんもりと盛り上がった土砂が道を塞いでいた。


 【土魔法】持ちなら動かせるかもしれないが、生憎(あいにく)とシュウイの【土魔法(ホビン)】は、現状【ロックバレット】以外のお披露目(ひろめ)は無く、ぶっつけ本番で動かせるかどうかは未知数である。

 同じ未知数なら、いっそ【爆発】に頼る手もあるか? どうせLv1ならショボい爆発にしかならない筈。更なる崖崩れを誘発する(おそれ)は無いだろう……


 ……などと不穏な思考を巡らせ始めたところで気が付いた。あの〝崖崩れ〟は何か可怪(おか)しくないか? そう言えば、教えてくれた少年もそんな事を言っていた。確かに、一見しただけでは崖崩れのように見えるのだが……



(……変だな? 崖崩れにしては、肝心の崖に崩れた様子が無いんだけど……?)



 道を塞いでいる土砂は確かにこの辺りの土のようだが、崩落土(仮)の上方の斜面に崩壊の痕跡が見当たらない。(むし)ろこれは――



(辺りの土を掻き集めてきて、崖崩れに偽装して道路を封鎖したような……)



 内心でそう(いぶか)りつつ、やや離れた位置から様子を窺っていたところで、シュウイの警戒系スキル群――【虫の知らせ】【嗅覚強化】【気配察知W】【イカサマ破り】【魔力察知】【生命探知】【看破】、ついでに【鑑定EX】――が反応した。

 素早く身構えたシュウイであったが、その間にも「崩落土」であったものに魔力が凝集してゆき、次第にその姿を変えてゆく――巨大なクレイゴーレムへ。


 そして……



兄弟(きょうでぇ)! 今助けてやるからな!」



 声も高らかに颯爽(さっそう)と(?)名告(なの)りを上げて現れたのは、(りょ)(しゅう)の縄目を受けた仲間を救わんものと馳せ参じた義侠の士! 不当な官憲に捕らえられた同志を、今こそこの手で解放せん!


 ……と、本人視点ではそうなっているのだろうが、(かな)しいかなその人相(にんそう)風体(ふうてい)は、〝颯爽(さっそう)〟という語とは遠く隔たったところにあった。

 薄汚れた()(なり)如何(いか)にもな悪相(あくそう)。縦横斜め裏表のどこから見ても、万人(ばんにん)が思い浮かべる「()らず(もの)」の姿である。

 SRO(スロウ)もこういうところは保守的であって、悪人のNPCは如何(いか)にも悪人然とした姿や名前を与えられている。その好例が絶賛護送中の二人の犯罪者で、「ごろつき(ゴロッキー)」に「札付き(フダッキー)」という解り易い名前を与えられている。


 要するに、そこだけ見ればステレオタイプな襲撃イベントの構図なのだが……



(「えーと……囚人護送車を襲うイベントという事……でいいの、よね?」)

(「構図的にはそうですね。……なぜか襲撃側が一人しかいませんけど」)

(「護送犯が二人いるのに、襲撃側が一人だけ……って、やっぱり変よね?」)

(「う~ん……襲撃側――と言うか、解放者側がヒーローの場合ならあり得るんでしょうけど……」)

(「え!? だったら、あたしたちが悪者側って事?」)



 SRO(ここ)の運営なら、それくらいの事はやりかねない。

 驚きの表情を浮かべるエンジュであったが、モックの意見は違っていた。



(「いえ……システムの制約上の問題じゃないかと」)

(「制約……人手不足とか? ……あ! 襲撃イベントに応募した悪堕ちプレイヤーが少なかったとか?」)



 素朴なエンジュの疑問はモックの意表を()いたようだったが、



(「あ……いえ、その可能性も無くはないですけど……護送隊の護衛が、実質シュウイ先輩一人だからじゃないでしょうか」)

(「あー……パーティ規模の問題かぁ」)

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― 新着の感想 ―
周囲にとってはクレイゴーレムってただ美味いだけの敵じゃありませんでしたっけ?()
 よりによってシュウイが攻略法を知ってるヤツでこられてもなー。
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