第百五十八章 人形遣いと少年~カンチャン村道中異変~ 2.イベントの予兆
ペンチャン村の村人たちに惜しまれつつ旅立ったシュウイたちであったが、行程の半分差しかかろうかというところで、思いがけず足止めを被る事になっていた。
「え? 崖崩れ? この先で?」
『うん。この先の角を曲がった先に、少し小広くなっている場所があって、その先の崖が崩れてんだ。大した崩れじゃないから、少し作業すれば馬車は通れるようになるだろうけど……』
「……何かあるの?」
『……何かね。変なやつが身を潜めてる上に、崖崩れ自体も何だか怪しい……何となく仕組まれたものっぽい気がしてさぁ』
「……通行人を足止めして、襲撃を目論んでいる者がいると?」
『一人だけっていうのがちょっと気になったけど、何となく怪しい気がしてさ。で、こうしてこっそり舞い戻って来たって訳』
「……解った。教えてくれてありがとう」
年若い――と言うか、ほとんど少年と言っていい年の行商人(?)が現れて、シュウイに忠告をしてくれたのだ。
どうやらこれが、幼馴染みたちから警告された「護送犯奪回イベント」なのだろうか?
色々と違和感を感じさせる展開ではあるものの、まともに戦えるのが他にいないという理由で先鋒を任されたシュウイとしては、既に自分一人で裁量できる範囲を越えたと判断せざるを得ない。なので一旦本隊に戻って、他の面々と相談する事にした。
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「崖崩れの方はともかくとして、待ち伏せてるのは一人だけか?」
ペンチャン村の世話役の一人という事で、護送隊のリーダーという貧乏籤を押し付けられたらしいベルズが、不可解といった顔で問いかけるが、
「教えてくれた――多分行商の――子供からの情報では」
シュウイとしてもそう答えるしか無い。
本来なら、ここで誰かを物見に出すのが常道なのだろうが……何しろ急遽決まった護送スケジュールなので、充分な陣容を整える暇など無かった。一応は冒険者であるシュウイたちが護衛を引き受ける事になったのだが……モックとエンジュは駆け出しの、しかもバリバリの非戦闘職である。勢い、荒事担当はシュウイ一人が受け持つ仕儀となっている。
現状で斥候任務に最も向いているのもシュウイなのだが、ここで唯一の護衛戦力であるシュウイが、本隊を離れるのは如何なものか。
……という次第で、待ち伏せているのが唯一人だけなら、このまま強行突破を図ってもいいのではないかという事になる。
ここで重要なのが、その〝待ち伏せているのは一人だけ〟という情報の信憑性なのだが……情報をもたらしてくれた「駆け出し行商人(仮)」は、巻き込まれるのを恐れたのか、いつの間にやら姿を消していた。
その素早さに感心しているシュウイであったが……モックとエンジュが妙な顔をして自分を見ている事には気付かなかった。
ともあれ――襲撃犯が一人だけという情報には首を傾げたくなるし、たかが子供に見破られる程度の隠れ方しかしていないというのも違和感がある。
腑に落ちない点は多々あれど、
(……アレかな? パーティの人数によって敵の人数が変わったり、クエストの難易度が変化するってやつ)
現状で戦闘担当と言えるのはシュウイ一人だけなので、それに呼応して襲撃犯も一人だけになった……というのは考えられなくもない。
取り敢えずはこのまま、用心しぃしぃ進もうではないか――と方針が決まった。
(さて……鬼が出るか蛇が出るか――ってところだね)




