第百五十七章 篠ノ目学園高校 5.放課後@ファミリーレストラン「ファミリア」~特殊ポータル~(その1)
「称号がある以上、村人の好感度がトリガーなのは確実ね」
「でもでも要ちゃん、好感度だけなら他の町とかでもあるんじゃない?」
卑近な例を挙げれば、ナンの町はどうなのか。
ツインヘッドグリフォン襲撃の防衛戦やら、その後の復興作業だので、住民好感度を稼いだプレイヤーはそこそこいた筈。なのに「特殊ポータル」の話がチラリとも出なかったのは?
「トンの町やナンの町のような都会には、特殊ポータルより転移門の方が似つかわしいと思うのよ」
「あー、転移門……」
「そう言えばあったな、そういうのも……」
「おぃ匠、プレイヤーで転移門一番乗りのくせして、その言い草はどうかと思うぞ?」
「いや……だってよ、あの後ちっとも話が進んでないからよ」
シアの町の部分解放で何か変化があるのでは――と、期待したプレイヤーもいたようだが、豈図らんや、何の動きも無いのだそうだ。なので攻略組も糸口が掴めず、現在は棚上げも同然の状態らしい。
「俺の事はいいだろ!? それより要、特殊ポータルの代わりに転移門って……いや、それより、どう違うんだよ?」
指弾追及を逸らす目的っぽくはあったが、特殊ポータルと転移門の違いについて気になったのは事実らしく、蒐一の方に視線を向ける匠。その求めに応じて、蒐一も確認済みの事実を報告していく。
両者の違いを幼馴染みたちが納得したところで、話の矛先は改めて要の方に向かう。
「根拠と言える程のものじゃないけど……①転移門が最初に使われたのがナンの町、②蒐君が最初に転移門の情報を耳にしたのがトンの町の冒険者ギルド、そして③特殊ポータル機能が最初に解放されたのがペンチャン村……というのが気になってるだけよ」
「あー……」
「言われてみれば……」
一つや二つなら偶然の可能性もあるだろうが、三つの情報がこれだけ綺麗なパターンを示しているとなれば、少なくともSROにおいては〝運営の意図〟を疑うに充分である。
「あとは名前かしらね」
「「「名前……」」」
「えぇ。転移門っていう名前自体、インフラを疑わせるに充分じゃない?」
「「「インフラ……」」」
「転移門」というインフラっぽい名前から連想されるのは、物流という問題である。そして、転移門が物流改善のために設置されたのだとすると、主要幹線道路を擁する大都市がその設置場所となるのは当然である。
ただそうすると、転移門が現時点で物流の中心として機能していないのは何故なのか。
「古代超文明のロスト・テクノロジー……っていうのは能くあるネタじゃない?」
「確かにありそうな話だな……」
「それで、転移門がそういった物流システムの一部として設置されていたのなら」
「その移動は主要都市間が中心となる。逆に言えば、都市以外の場所への往き来に便宜を図りたいなら、転移門以外のシステムが必要になる……成る程、話の筋は通るな」
「正直、証拠も何も無いんだけど、こう考えると話の据わりが良いのよね」
幼馴染み二人の会話を、ほへーっという感じで聞いている蒐一。嗚呼、βプレイヤーというのはこれ程のものなのか。
他人事のように感心していた蒐一の耳に、これも負けず劣らず他人事のような口調で茜が問いかける。文字どおり〝寸鉄人を刺す〟風情で。
「ねぇねぇ要ちゃん、ペンチャン村のような場所って他にもあるのかな?」
転移門の起源のような高尚な議論ではないが、或る意味冒険者として最も気にすべき疑問点であるだけに、匠と要も議論を中断してこちらを向いた。
「……何か気が付いたのか?」
「ん~……蒐君の特殊ポータルって、〝特殊ポータル機能解放(ペンチャン村)〟ってなってるんでしょう? だったら、ペンチャン村以外の特殊ポータルもあるのかなぁ――って思って」
「あー……」
「〝(ペンチャン村)〟ってあるものねぇ……」
根拠と言うには薄弱だが、議論の取っ掛かりとしては悪くない。




