第百五十七章 篠ノ目学園高校 4.放課後@ファミリーレストラン「ファミリア」~【魔力操作入門】~
「えーと……これもエンジュとモックが拾ったんだけど……【魔力操作入門】ってスキル、知ってる?」
「【魔力操作】……じゃなくて?」
「……『入門』?」
「うん。入門」
どうも時間的に、鈴の演奏を終えた辺りで拾ったらしいが、
「……拾ったのはエンジュさんとモック君の二人なの?」
「うん、二人」
――さぁ、話が解らなくなってきた。
これが〝モックだけが拾った〟というなら、(シュウイ程ではないにせよ)色々と特殊事情を抱えているプレイヤーの事だから、説明は幾らでも付けられただろうが、エンジュがそこに加わっているとなると……
「……婚礼の演奏に参加したから……かしら?」
「けどな要、そうするとこの『演奏』は、一般的な演奏修得イベントじゃないって事になるぞ?」
「だって匠君、結婚式だよ!? 一世一代のメインイベントなんだから、普通のイベントと同じ筈が無いじゃない!」
「お、おぉ……そうかよ」
女子にとっては憧れのイベントである――と熱弁力説する茜に匠も気圧されているようだが、「村の婚礼」が特殊なイベントらしいのは事実である。
という事は……吟遊詩人の演奏修得イベントにも、一般と特殊の二つがあるという事か?
「でもさ、それだとあまりにも特殊の度合いが強過ぎない? 婚礼に鈴の演奏って、まるでモックを狙い撃ちじゃん? なのにエンジュが巻き込まれたのは何故なのさ?」
「そこなのよね……」
幼馴染みたちにはまだカミングアウトしていないが、エンジュは『ペンチャン村の友人』称号と特殊ポータル機能も同様に獲得している。ただ、これらはシュウイも獲得しているため、ペンチャン村への貢献度が理由だとの推測ができる。
ところが、【魔力操作入門】についてはシュウイは取得しておらず、その説明が当て嵌まらない。該当する条件は「鈴の演奏」だけなのだが……
「……SROの『鈴』って、何かあるのか? 『鼓吹の鈴』とか、そのモデルになった……えーと……」
「『聖呪の鈴』ね」
「そう、それ! それに加えて、結婚式での鈴の演奏だろ?」
「ここまで来ると露骨よね……」
「絶対何かのヒントだよ!」
……違う。
「聖呪の鈴」と「鼓吹の鈴」については、当初から予定されたアイテムであったが……それだけだ。
婚礼での鈴の演奏イベントは、思いがけず楽器扱いされた「鼓吹の鈴」のフォローのために、運営サイドが四苦八苦して辻褄を合わせようとした結果に過ぎない。
なのに……如何なる悪魔の計らいか、
「実は……エンジュが『鈴の谷の地図』なんてのを引き当てちゃったんだよね。露店の籤引きで」
「「「はぁっ!?」」」
……ここまで来ると、もはや何かの手の上で踊らされているような気すらしてくる。運営の意図をまんまと出し抜き続けてきたその悪魔の名を「亘理」というのだが……そんなのは幼馴染みたちの与り知らぬ事情であった。
「拾ったのはエンジュさんなのよね? モック君じゃなくて?」
「うん。エンジュが引き当てた」
「だったらこれは……もう吟遊詩人とは無関係に、『鈴』のイベントに入り込んだと考えた方が良さそうね」
「そうだな」
「うん!」
……実際には「鈴のイベント」などありはしないのだが、そういった幻影が生み出されるのも無理のない流れになっているのは事実であった。
「これってやっぱり要の言うとおり、ペンチャン村が特殊な場所なのかもな」
「多分そうだと思う。『特殊ポータル機能』なんてものが解放されたし」
……幼馴染みたちの怒号と追及がこの日一番のものになったのは、これはもう仕方のない事であったろう。




