第百五十七章 篠ノ目学園高校 2.放課後@ファミリーレストラン「ファミリア」~「祝福」論争~(その1)
「えーと……まず手始めに、吟遊詩人の祝福って楽器から出るの?」
「「「……はぁ?」」」
一体どんな爆弾ネタが飛び出すのかと戦々兢々としていたら、案に相違して訊かれたのは「吟遊詩人の祝福」について。〝手始め〟の名に相応しい小ネタのように思えるが、その一方で答えづらいネタでもあった。
「――ってか蒐、抑吟遊詩人って、第二陣から導入されたジョブだからな?」
「βテストでも実装はされてなかった筈だし」
「うん! 解んない!」
「そっかー……」
β版に無かったというのは初耳だが、吟遊詩人を選んだプレイヤーは他にもいるそうだし、そろそろ情報の一つも上がっているんじゃないかと思っていたのだが、
「いや……バフとかデバフの話は時々見かけるけどな」
「それとは違うのよね?」
「う~ん……自信は無いけど、以前に見た聖魔法の魔力とは、少し違ってたみたいなんだよね。あと、エンジュの証言もあったし」
「証言……?」
「あ、いや……正しくは、エンジュが村のオバさ……ご婦人方から、聞くともなしに聞いたっていうんだけど。……何かさぁ、『祝福』っていうのは〝出来の悪い加護みたいなもん〟らしいんだよね」
蒐一としては噂噺をそのまま転送している感が強いのであるが、幼馴染みたちの受け取り方は違っていたらしい。三人ともに黙って考え込んでいる。
「えーと……?」
「あぁ、悪い」
何か問題でもあっただろうか――と戸惑う蒐一に、匠が軽い謝罪と共に説明の労を執る。それによると――
「え……? 無いの? 『祝福』?」
「えぇ。〝出来の悪い加護みたいなもの〟っていう説明が本当なら、それはバフともデバフとも違うわね」
「バフもデバフも、効果は時間限定だからな。『加護』はそうじゃないだろ?」
「寧ろ体質改善?」
「あー……何か解ったかも」
同じ「祝福」という言葉が使われたケースには心当たりがある。少し前にシュウイ自身がかけた【猩々】である。あの効果が数分で消え失せたりしたら、期待を裏切られた呑み助たちの失望落胆と怒りは凄まじいだろう。
そんな事態になっていないという事は、それはつまり、「祝福」の効果は(それなりの)長時間持続するという事だ。
まぁ確かに、新婚夫婦への「祝福」が、僅か数分で消えてしまうというのは何か不吉である。それくらいなら、最初から貰わない方がまだマシ……という意見も出るだろう。
「吟遊詩人を目指すプレイヤーは何人かいるけどな、皆バフ・デバフ狙いでゲームを進めてるんだよ」
吟遊詩人志望のプレイをしてフィールドで戦闘していると、条件次第ではNPCの吟遊詩人が現れて助太刀してくれるらしい。そして首尾好く戦闘に勝利すると、NPCからバフ・デバフの曲を教えられるそうだ。今はこのクエストでバフ・デバフ曲を憶えるのが主流になっていると聞く。
「ただな、どんな場面でNPCの吟遊詩人に出会うかで、教わる曲目も変わるらしいんだわ」
「あのね、酒場にいる吟遊詩人さんからは、別の歌を教わるらしいの!」
こっちは酔客に受けの好い曲らしい。特に明瞭な効果は無いようだが、相手の口を滑らかにして、質問や交渉で優位に立つ効果があるのでは――と、疑われているらしい。
「と言うかな蒐、バフ・デバフ曲って地元民からの受けは今一つなんだよ」
「そうなの!? ……いや、そうか」
「あぁ、そうなんだよ」




