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第百五十六章 ペンチャン村滞在記(十日目) 7.宿泊所食堂(その2)

「そう簡単には進ませてくれないって事かぁ」

「今までの流れを考えると、何かのフラグを立てないとストーリーが進まないんじゃないでしょうか?」

「あー……ありそうです」



 では、その〝フラグ〟とは一体どういうもので何処(どこ)にあるのか。村人たちの反応を見るに、ここペンチャン村に無い事だけは確かなようだが。


 そんな中、



「……神殿への奉納クエストの直前に拾ったって事はさ、奉納クエストを済ませた後で(・・)、この場所を探せ……っていう事だよね?」



 ……などとシュウイが一つの可能性を示唆した事で、一気に議論が進行する。

 ただし――



「あー……そうかもです」

「奉納クエストで何かヒントが示されるのかもしれませんね」

「それか、クエストを(こな)して得られるアイテムとかが、場所を探すのに必要なのかも」

「逆に言えばそれは、奉納クエストの中にヒントがあるって事だよね」



 ……生憎(あいにく)な事にその進行方向は、事実とは微妙にずれていたのだが。


 今更言うまでも無いだろうが、「技芸神への奉納」クエストと「鈴の谷」案件は全く別物、無関係である。

 前者は正しくクエストであるが、後者はお騒がせ居士(こじ)(わた)()が、「()(すい)の鈴」を素材に使う邪道レシピを仕込むに当たって勝手にでっち上げた代物である。デスマーチ真っ最中の事とて或る程度の自由裁量が認められていた――もしくは放置されていた――とは言え、公式には何の報告も相談もされていない。身体を壊した(わた)()がそのまま退職したせいで、この「鈴の谷」案件はその後どうなっているのかすら――現時点では――不明なのであった。(たと)えは悪いが、記録が紛失した地雷のようなものであった。


 更に言えば、上記二つの共通点のように誤認されている「鈴」も、実はモックが「()(すい)の鈴」を楽器として使うという革新的な行為――暴挙とも言う――に踏み切ったため、慌てた運営サイドが演奏の修行イベントを(きゅう)(きょ)でっち上げただけ。その前にモックが「技芸神への奉納」クエストを受けていた事で、相互に関連があるような誤解を招いているが……繰り返すが、両者は全くの無関係である。


 ゆ・え・に……「技芸神への奉納」クエストが「鈴の谷」探索のフラグになるなどという事はあり得ない……その筈である。

 (もっと)も運営管理室の面々も、(わた)()の前科に(かんが)みて、近頃はその確信が揺らいできているのだが。


 ともあれ、「鈴の谷」についての検討は後日に廻そう……という話になったところで、シュウイはふと気が付いた。



「そう言えば……二人には話したっけ? 『()(すい)の鈴』が何かの素材になるらしいって事」

「え……?」

「初耳です……」



 【錬金術(邪道)】の件にも関わってくるので、これまでは秘匿を決め込んでいたが、事ここに至っては情報の一端を開示する必要があるだろう。

 そう判断したシュウイは、詳しい事情は伏せた上で、「()(すい)の鈴」を素材としたレシピがあるらしい(・・・)という事を二人に教えた。それが何のレシピなのかは、シュウイにだって解っていないのだが。



「あー……そうすると……」

「リアルの『加茂岩倉遺跡』みたいに、多数の鈴が埋納されている可能性もありそうですね」

「素材……リスポーンするんでしょうか?」

「え……? どうだろう……?」



 エンジュの指摘にさすがのシュウイも(しば)し二の句が継げなかったが、それは現場で確認すればいいと吹っ切った。


 これで懸案事項は出尽くしたか……と思っていたら、



「あの……僕たち、【魔力操作入門】というスキルを拾ったんですけど……」

「【魔力操作……入門(・・)】?」

「はい。『入門』です」



 【魔力操作】というスキルの事なら、シュウイも耳にした事がある。と言うか、「ワイルドフラワー」の面々が「使役術師への弟子入り」クエストで最初の課題として与えられたのが、【魔力操作】の修得であった筈だ。聞けば使役術師には必須のスキルらしいが、【スキルコレクター】のせいで真っ当なスキル取得が困難になっているシュウイにとっては、〝見果てぬ夢〟も同然のスキルである。

 仮令(たとえ)「入門」という添え字が付いていようと、シュウイにとっては羨望の種でしかないのだが……いや、添え字?



「そんなスキル、あったんだ……」

「いえ、掲示板とかには報告されてないスキルですね」

「未報告スキル?」

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