第百五十六章 ペンチャン村滞在記(十日目) 2.村の婚礼(その2)
気を取り直したらしきモックを連れて、シュウイたちは宴会の場に向かった。振る舞い料理に舌鼓を打ちつつ廻っていると、幾つかの露店に人が集っているのが見える。見れば店主は村人ではなく、カンチャン村からやって来た本職の的屋だという。訊いてみれば彼らだけでなく、婚礼というので近在からも祝い客がやって来ている由。
ちなみにカンチャン村からは、好い機会だというので原石の買い入れ担当者も来村しているという。
「へぇ、そうなんですか」
「あぁ。こう言っちゃ何だが、婚礼なんてのは騒ぐための恰好のネタだからな」
――などと身も蓋も無い事情もあれど、新婚の二人を祝う心情に偽りは無いそうで、これくらいは神様も大目に見て下さるのだという。
(「まぁ、地域経済の活性化にも役立ってるみたいですし」)
(「その辺りも呑み込んだ上での、古くからの慣習なんだろうね」)
――と、まぁそんな感じで、縁日と言うには小規模なそれを熟々眺めていると、射的や球転がしなどに交じって籤引きの露店があった。子供向けの玩具ばかりかと思っていたら、豈図らんや、
(「大人向け……と言うか、玩具以外の籤もあるんですね」)
(「あ、大当たりは結構値打ち物みたいですよ」)
(「どうせ当たんないんだろうけど……記念にやってみる?」)
当たり外れは別にして、この手の籤にワクワクさせられるのは、古今東西リアルとヴァーチャルを問わず世の常、いや真理である。
(「ガチャ要素が無いっていう声もありましたけど……」)
(「こんな形で実装されてたんですねー」)
(「いや……プレイヤーが期待してるガチャって、スキルとかアイテムとかが落ちるやつじゃないの? 幾ら何でも……」)
子供の遊びみたいな籤引きで、スキルだのアイテムだのが落ちたら大事だろう。流石にこれは違うと思うが、
(「でも、こんな形でガチャ要素が実装されてる可能性はあるんじゃないですか?」)
(「高級ガチャとか、他のどこかにはあるかもしれませんし」)
(「まぁねぇ……」)
何はともあれ、ここは一つ運試しをしてみるべきか。
まぁ、傍で見ている限り、景品は微妙なものばかりのようだが。
(「お守りの蹄鉄って……あるんですねぇ……」)
(「だけど、ちょっと大きくない? アレ」)
(「模造品なのか、それとも実際に、あんなデカい蹄鉄を着ける馬がいるのか……」)
(「軍馬とか、重輓馬とか?」)
(「ちょっと気にはなりますね……」)
程良く好奇心と射幸心も煽られた事だし、各人一回くらいはやってみようと話が纏まる。シュウイも態々ジョブを「遊び人」に変えて挑戦してみる事にした。
その結果、シュウイとモックが引き当てたのは、
「……サルノコシカケ……かな?」
「僕のは鳥の羽根みたいですね。……綺麗ではあるんですけど」
まぁ、別に厄介物という訳でもないし、話の種にはなりそうだ。エンジュは何を引き当てたのかと見れば……
「……何だろこれ? 古惚けた地図みたいな……『鈴の谷』……?」
「「――鈴?」」
「鈴」と言われて直ぐに「鼓吹の鈴」を連想するくらいには、モックもシュウイもその単語を気に留めている。なのでこの時も即座にエンジュの傍へ寄って、脇からその「地図」を覗き込んでみたのだが、
「……確かに『鈴の谷』って書いてあるね。……標題かな?」
「地形図ですよね。……『磐座』って書いてある下に×印がありますけど……」
見れば見るほど「宝の地図」に見えてくるが……これは子供騙しのネタ商品なのか?
「そうは見えませんけど……本当に古いもののようですし……」
これは店主に訊くのが早道だろうと訊ねてみたが、返って来た答えは――
「……あ? 宝の地図ってやつじゃねぇのか?」
――という、心許無いとも心強いとも判じかねるものだった。
店主の宣言するところでは、どこで手に入れたかは定かでないが、少なくとも自分がでっち上げた紛いものではないという。
「覚え書きってぇか覚え描きってぇか……そこに何かがあんのは確かなんだろうよ」
「ただ、〝それ〟が何なのかは判らない――と」
「そういうこった」
作品違いながらご報告を。
1巻発売中のコミカライズ版『転生者は世間知らず』ですが、電子単行本2巻の発売日に関しまして確認がとれましたのでご報告いたします。
10月17日(金)から先行配信、11月14日(金)から全書店配信となるようです。
どうかよろしくお願いします。




