表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
834/895

第百五十一章 ペンチャン村滞在記(八日目) 4.花咲く森の中(その2)

 さて……思いがけない場面で思いがけない選択を迫られたシュウイであったが、〝何故(なぜ)〟こんな選択画面がポップしたのかの追求はまるっと放り捨てていた。(そもそも)現場で悩むようなものでもないし、こういう事案は頼れるβプレイヤー(おさななじみ)たちの管掌である。この場で自分が頭を悩ますべき案件ではない。

 ()(よう)に割り切ったシュウイであったが、(くだん)の質問にどう答えるかについては、常に似ず(ひと)(しき)り悩む事になった。それというのも……



「う~ん……食糧確保の見地からは『Y』を選ぶべきなんだろうけど……それを選ぶとミツバチがなぁ……」



 SRO(スロウ)では珍しくない事だが、提示された選択肢には、〝採蜜〟の程度が示されていない。どれだけの花からどれだけの蜜を採集するのか、一部だけなのか()(こそ)ぎなのか、その辺りがまるで不明なのである。

 こんな状況で()(かつ)に「Y」を選択して、花蜜を()(こそ)ぎ収奪するような事になったらどうするのか。

 ミツバチの蜜源が無くなって、蜂蜜の供給に支障を(きた)すだけでなく、受粉と結実が妨げられた結果、香辛料や薬の素材までもが不足する……などという事態に発展する事だって考えられるではないか。



「……SRO(ここ)の運営ならそれくらいのトラップは仕込みそうだしなぁ……」



 普通に考えれば、採蜜量が指定できるのではないかと思われるが、そう決めてかかっていいものか。何より()(こそ)ぎになった場合の影響が大き過ぎる。

 ()りとて、折角の機会を無駄にするのも……と懊悩(おうのう)していたシュウイの目の前に、ジュナがヒョコリと姿を現した。



「ジュナ……?」



 (いぶか)るシュウイの目の前で、任せろと言うように胸を叩く小さなズートレント(ジュナ)

 何をするつもりなのかと怪しむシュウイに、ジュナが以心伝心でイメージを送って来たのを見れば、



「え……? 花粉媒介? そんな事できるの?」



 ズートレントの能力なのか、ジュナは花粉の媒介ができると言う。もしもそれが可能なら、最悪花蜜を()(こそ)ぎにしても、リピリの受粉と結実だけは保証できるかもしれない。ミツバチの餌を奪ってしまうのは避けられないが、開花は今日一日だけの事ではないだろうから、後日に咲いた花から蜜を得る事はできるだろう。


 そう思案を(まと)めたシュウイは、ジュナの花粉媒介に命運を託し、思い切り良く「Y」をタップした。



「……ま、そりゃそうだよね、さすがに」



 さすがに全ての花から蜜を強奪するような理不尽な設計にはなっておらず、指定した範囲内の花から採蜜するようだ。なのでシュウイは、少しずつ範囲を絞って蜜を採り、その範囲の花の受粉をジュナに頼むようにした。ジュナがどこまで花粉の媒介を(こな)せるのか、その限界も判っていない状況では、それが賢明な選択であったろう。

 結果的にシュウイは全体の三割ほどの花を対象にして、小さな試験管に三分の一ほどの蜜を得る事に成功した。


 そして……



「……何でこんな事ができたのか不思議だったけど、いつの間にか【採蜜】ってスキルを拾ってるな。拾った切っ掛けとか詮索(せんさく)するのは後にして……【等価交換】? ……何だこれ?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
何故か頭の中で「シュウイが馬鹿を拷問に掛けて何もかも奪い尽くすのは錬金術、つまり等価交換?」なんて思い浮かんだw
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ