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第百五十一章 ペンチャン村滞在記(八日目) 2.クマさんに出会った/クマさんが出遭った

 この時のシュウイは、いつもの警戒系スキル群に加えて【看破】と【遠見】も発動した上に、視界の確保を目的として【ろくろ首】まで発動しつつ歩いていた。

 そして、そんなシュウイが違和感――ただし身に憶えのある――に気付かない筈も無い。【ろくろ首】の特性を活かして、ユラリ、ニョロリとそちらを振り向いたシュウイの視線の先にあったのは、呆然と立ち尽くしている一頭のギャンビットグリズリーであった。



(あー……またこのパターンか……)



 前回森へ入った時にも、【ろくろ首】状態のシュウイを警戒したものか、モンスターが(おび)えたように遠離(とおざか)る事が度々あった。モノコーンベアに()(くわ)した時など、ホップ・ステップ・ジャンプの後方三段跳びで逃げられたくらいだ。

 だが、それも二度目ともなれば少しは慣れるのではないかと思っていたが……どうやらそうでもなかったようだ。

 襲うべきか襲わざるべきか、それとも何も無かった事にして立ち去るか。葛藤(かっとう)に襲われているらしきギャンビットグリズリーを見て、シュウイは試しの、或いは駄目押しの一手を放つ。



(ものは試しで……【エリマキ】、発動!)



 この【エリマキ】というのはレアスキルであるが、名前が怪しげなカタカタ表記な上に、未解放時の説明文には唯〝エリマキを着ける〟としか書いてないため、使うのに二の足を踏むプレイヤーも多いのであるが……実はエリマキトカゲのようなエリマキを発現させるスキルで、()(かく)と視線誘導の効果がある。

 一説に拠ると〝取るかどうかで壁役を悩ませるスキル〟らしいが、その辺りの事情も含めてタコ平から聞いていたシュウイは、態度の決まらないギャンビットグリズリーに踏み絵を迫るつもりもあって、ここでその初使用に踏み切った。

 ……まぁ、〝その場の勢い〟とか〝ものの弾み〟とか、或いは〝気の迷い〟とかいう部分があったのは否定しないが……ともあれその一手は、(こう)(ちゃく)していた場面を劇的に、それはもう劇的に動かした。


 目の前の「怪物(シュウイ)」の頭の周りに、突如その頭の数倍に及ぶ「エリマキ」が出現し、クワッとばかりにそれが拡げられるのを目の当たりにしたこのギャンビットグリズリーは、瞬時に後方へ()退(すさ)って距離を取ろうとし……たのだが、狼狽(ろうばい)のあまり足が(もつ)れたものか、哀れ()(ざま)に尻餅を()く羽目になった。それはもう、スッテンコロリという擬音が聞こえてきそうなくらいの見事さで。


 両者そのまま数秒間ほど見合っていたが、ギャンビットグリズリーは尻餅を()いたままの体勢でジリッジリッと器用に後退(あとじさ)ると、()(にわ)に身を(ひるがえ)す。

 瞬時に戦闘態勢に移ったシュウイを尻目に、ギャンビットグリズリーは四つ足のまま、ドタバタズベッという感じで、()けつ(まろ)びつ一心不乱に駈け去った。文字どおり、〝尻に火が()いたような勢い〟で。


 当惑した様子のシュウイを後に残したまま。



「う~ん…………【ろくろ首】と【エリマキ】の組み合わせって、()(かく)効果が大きいのかな?」



 ――そりゃそうだろう。


 ギャンビットグリズリーの視点に立って見れば解るが、見ようによっては人間に擬態した……と言うか、人頭状の疑似餌を持ったワームか肉食植物が、突如その(あぎと)を開いて襲いかかって来るようにも見えるのだ。()してその「(あぎと)」が自分の体幅を上回るとあれば、丸呑みされるように錯覚するのも無理はない。そりゃ、モンスターが慌てふためいて逃げ出すのも当たり前である。


 運営も管理AIも、まさかこんな相乗効果は想像もしていなかっただろうが……これも図らざる組み合わせの妙というものであろうか。


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― 新着の感想 ―
そもそもプレイヤーなのかどうかAIが判別に迷う(しかも半分以上モンスターよりで)状態が更に人間度を下げればそりゃクリーチャーにしか見えませんって() リアル寄りにしたせいでモンスターが他のモンスターに…
遊星からの物体X思い出した(渡
リアルなら体中の穴という穴から全噴射しながら逃亡してる位の怪異だよマジ可哀想wwwwwwwww
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