表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
829/894

第百五十章 篠ノ目学園高校 7.放課後 一年三組教室~【猩々】問題~

 さて、先般(おさな)馴染(なじ)みたちの華麗な推理に瞠目(どうもく)し、さすがにβプレイヤーだ、平々凡々たる自分――註.(しゅう)(いち)視点――とは違うと感心した(しゅう)(いち)であるが……では、その(しゅう)(いち)は一体何を考えていたのかと言うと――



(しゅう)、難しい顔して一体何を考えてんだよ?」

「え? ……あ、うん、ちょっとね」

「「「……………………」」」

「……【猩々(しょうじょう)】のレベル上げについて考えてた」



 適当にはぐらかそうとした(しゅう)(いち)であったが、もの問いたげな三対の視線に抗し得ず、気の進まぬカミングアウトを()いられる羽目になっていた。


 (おさな)馴染(なじ)みたちがゲームの攻略という視点でものを見ていたのに対し、私的にレベルアップを考えていた事に(いささ)か決まり悪い思いをしているのだが……だからと言って(しゅう)(いち)がコンプレックスを抱えている訳では全くない。

 (そもそも)の話、(しゅう)(いち)は【スキルコレクター】というユニークスキルのせいで、一般的なスキル取得ができなくなっている。言い換えると、一般的な成長計画などが立てられない状態であり、()して攻略の計画などは無理な話である。必然的帰結として、(しゅう)(いち)はゲームの攻略を競うよりもノンビリとしたスローライフを送る事を主眼としている……筈なのだが、なぜか妙に濃い生活を送る羽目になっている。


 それに加えて蒐一(シュウイ)は、(もっ)()はモックとエンジュの指導育成を引き受けている状況であり、それを放って勝手な攻略などできる訳がない。ならば今後の方針を優先して検討するのは自明の理というものだ。

 それに、(おさな)馴染(なじ)みたちとの先程の討議に(かんが)みて、(しゅう)(いち)には【猩々(しょうじょう)】のレベル上げを考える(れっき)とした理由があった。



「ほら、さっき(かなめ)ちゃんが、僕は技芸神に目を付けられてる可能性が高いって言ったじゃん?」

「「あー……」」

「……あったな、そんな話」



 これ以上技芸神に目を付けられないよう、【猩々(しょうじょう)】のレベル上げを控えるという考えもあったのだが、既に技芸神に目を付けられている可能性を考えると、ここは(むし)ろ【猩々(しょうじょう)】のスキルアップを図っておいた方が良いかもしれないと考え直したのである。

 だが、そっちはどうせ村人の要請で祝福をかける事になるのだから――と、あまり考えないようにしていたのだが……



「レベルアップじゃなくて、単に効果を高めるだけなら、もう一つの方法がある事に気が付いたんだ」

「……【バーテンダー】による補助か?」

「それもだけど【歌舞の心得】。あれって確か、歌と踊りが上達し易くなるスキルだよね」

「「「あぁ!」」」



 そう言えば、確かに蒐一(シュウイ)はそんなスキルも持ってたな――と、記憶を新たにする一同。成る程、確かにそっちのレベルを上げる事でも、【猩々(しょうじょう)】のレベルアップを図る事はできそうだ。



「たださぁ……【歌舞の心得】って、歌と踊りをワンセットで実行しないと駄目みたいなんだよね」

「え? そうなのか?」



 (かつ)てシュウイは【歌舞の心得】をレベルアップさせようとして、町外れで【デュエット】を発動して独り熱唱した事がある。お蔭で【デュエット】はレベルアップを果たしたが、【歌舞の心得】はピクリともレベルアップの気配を見せなかった。

 【猩々(しょうじょう)】は「舞」と言うくらいだから踊りの要素はあるのだが、「歌」の要素はほとんど無い。代わりに、何処(どこ)からともなく謎のBGMが聞こえて来る仕様になっている。

 つまり……現在のレベルの【歌舞の心得】では、【猩々(しょうじょう)】のレベルアップをアシストできるかどうかに懸念がある。ここは【歌舞の心得】自体のレベルを上げて、「舞」単体でもアシストできるように、効果の範囲を拡大しておくのが望ましいだろう。



「けど、そのためにアイドルか何かの歌を振り付け込みで憶えなきゃならないのかって考えると、少し憂鬱(ゆううつ)になっちゃって。……こないだはラジオ体操で何とか誤魔化したんだけど」

「「「ラジオ体操」」」



 ラジオ体操の第一と第二を演じる事で、どうにか【歌舞の心得】をLv3まで上げる事ができたのだ。まぁ、【器用貧乏】改め【器用平民】となったスキルのアシストも大きかったようなのだが。

 ただ、さすがにLv4以降となると、ラジオ体操の威光も及ばないのではないかと考えられるため、アイドルの歌と踊りという発想になったようだ。さもなければ児童のお遊戯とかだが、高校生にもなってそれをやるのは(いささ)か辛い気がする。



「……いえ、ちょっと待って(しゅう)君。それは飽くまで【歌舞の心得】自体のレベルアップでしょう? 【歌舞の心得】の効果の範囲とは違うんじゃない?」

「……え?」

「そうだな(しゅう)。【歌舞の心得】の効果は確かに〝歌と踊りが上達し易くなる〟ってもんだが、それは〝振り付きの歌〟限定って事じゃない筈だぞ」

「だよねー。そうでなきゃ使い勝手が悪過ぎるって、クレームが殺到する筈だもん」

「あ……」

「あとな(しゅう)、お前はレベルアップしなかったって言うけど、幾ら【器用貧乏】だか【器用平民】だかの恩恵があるって言っても、(そもそも)一回でレベルアップするっていうのが普通じゃないからな」

「そうね。一度でのレベルアップにまでは至らなくても、経験値の蓄積はあると考えるべきね」



 ……言われてみればそのとおりだ。自分は何を勘違いしていたのか。

 ならば、今のままの【歌舞の心得】でも、【猩々(しょうじょう)】のアシストはしてくれるのではないか。虫の好い考えのような気もするが……いや、(あかね)の言うとおり、妙な制限を付けてはプレイヤーからのクレームが殺到するだろう。あの運営がそんな隙を見せるとも思えない。



「まぁ、【歌舞の心得】のレベルアップも、重要っちゃ重要なんだがな」

(しゅう)君、踊るの?」

「踊りません」



 ……とは言ったものの、いざとなればモックとエンジュと一緒に、鈴の演奏講習に混ぜてもらおうかとも考えていたが、そこまでする必要は無さそうだと、(しゅう)(いち)は胸を()()ろす。



「鈴の演奏講習クエスト?」

「……って、何なのかしら?」

「初耳!」

「あ、うん。これは僕じゃなくて、モックとエンジュが出会ったイベントなんだけど……」



 既に二人からは、これらの件について幼馴染み(βプレイヤー)たちに相談する事の許可を貰っている。何気に重要そうな話が含まれているし、ここは有能な幼馴染み(βプレイヤー)の知恵を借りるのが良いだろう。


拙作「ぼくたちのマヨヒガ」、本日21時に更新の予定です。今回は四話構成となります。宜しければこちらもご笑覧下さい。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
この小説は何かの目的で推測し作戦を考え行動し、成果挙げずに別のことやって今までの目的は放り出すを繰り返し過ぎてるんだよな
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ