第百四十三章 ペンチャン村滞在記(五日目) 6.おやすみなさいのその前に~ワクワクの実~(その2)
「う~ん……やっぱり品質が上がってるよね?」
新たに【調薬】と【錬金術】から【素材鑑定】が参入して強化された(筈の)【鑑定EX】、その鑑定結果に拠ると、原料たるワクワクの実の品質が上がっているのは確かなようだ。
尤も、【猩々】の期待に添えなくて悪いが、このワクワクの実は酒造りに使うのではなく、喉飴の原料になってもらう……
「あー……何で【猩々】が発動したのかって不思議だったけど……そう言や果実酒の原料にもなるんだっけ……」
今更のように気付いて独り納得していたのだが……「酒」というキーワードが切っ掛けとなって、とあるスキルの事を思い出す。拾ってからこれまで使う機会の無かった、【バーテンダー】というスキルの事を。
「……確か、持ってると【調薬】にプラスの補正がある……って言ってたよね?」
カクテル作りのスキルとばかり思っていて、副効果の事をすっかり忘れていたとは……返す返すも失態であった。自分にとっては寧ろ、この副効果の方こそが重要だというのに。
「ま、まぁ、今回はちゃんと思い出せたんだし。過去に囚われるのは生産的じゃないし」
〝思い出したが吉日〟とばかりに、【バーテンダー】を解放して有効化する。これで【調薬】にプラスの補正がかかる筈だ。
これにて準備は万端とばかりに、改めてシュウイは喉飴の作製に挑む。
「あー……確かに品質が上がってるけど、【猩々】と【バーテンダー】のどっちがどれだけ貢献しているのか、そこは判らないか」
工夫無しに作った時の品質がEだったのに対して、今回のそれはDになっている。
「一気にレベル一つ分の底上げかぁ……」
シュウイ自身のスキルが上がれば、品質Cも見えてきそうだ。まだまだアラベラには及ばないにしても、粗悪品でなく一般的な普及品のレベルに届いたというのは歓迎すべきだ。何と言っても自分は生産職ではなく冒険者。アイテム――この場合は喉飴――を得るのが目的であって、その手段に拘るつもりは無い。スキルだろうが何だろうが、使えるものは何でも使う。
「まぁ、だからと言って、スキルアップを目指さない訳じゃないんだけどね」
ともあれ、ワクワクの実から喉飴が作れる事は確認できた。既に手持ちの実は少なくなっているので、これ以上の確認は無理だろう。明日以降に日を選んで、追加で採集する必要がある。
「それに……喉飴以外にも作れるものがありそうだしね」
【猩々】が反応したという事は、ワクワクの実からは酒も造れる可能性が高い。孰れ技芸神の神殿に詣でるつもりのシュウイたちとしては、御神酒の確保も重要な課題である。自作の酒を奉納するにしろ、購入した酒を奉納するにしろ、酒の品質を高めるという【猩々】のレベルアップは避けては通れない。
「適当な日を選んで、また森に入るか。今度はもう少し広い範囲を探してみるかな」




