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第百四十一章 運営管理室~惜しみなくAIは(運営の平穏を)奪う~ 5.「見習い保安官」と『治安の執行者』

 (とく)()劇薬的(・・・)――「劇的」ではない――な提案は、さすがに即座に了承とはならず、検討課題として保留(ペンディング)された。懸案事項は他に幾らでもあるのだ。



「ただまぁ、(シュウイ)がズートの治療クエストで得たドロップ品等については、当面頭を悩ます必要は無いだろう」

「……だな。喫緊(きっきん)に使われるような事も無さそうだし」

「うむ。ズートの好感度が爆上がりしているような気もするが……今更だしな」

「そうそう、問題は他にも山積みなんだ」


(「……そう言って問題を先送りにした結果がぁ、今のような事態を招いたんじゃなぃんですかぁ?」)

(「そう言ってやるな。先に片付けなきゃならん案件がしこたまあるのも事実なんだ」)



 (いささ)か逃避的な気配があるとは言え、検討すべき案件が他にあるのも事実な訳で……運営管理室のスタッフたちは、その「案件」の検討に立ち向かった。



「……やはり最大の問題は、あのジョブと称号のセットだろう」

「『見習い保安官』のジョブと『治安の執行者』の称号だな」

「まさか……犯罪者のスキルを没収するなんて機能が付いてるとは……」



 SRO(スロウ)におけるスキルや称号の数は何しろ莫大なものなので、開発および運営陣と(いえど)も、その全てを把握する事などできていない。と言うか、仮令(たとえ)作った当人でも、憶えているかは疑わしい。

 (ひっ)(きょう)、今回のような痛恨の見逃しも生じるのであった。



「いや……犯罪者を捕縛するという保安官の任務に(かんが)みれば、その無力化を図るのは当然の事だし、そのための手段が講じてあるのも当然なんだろうが……」

()りに()って、その手段(・・)があの()に渡ったというのがなぁ……」



 【スキルコレクター】というユニークスキルを背負(しょ)い込む事になったシュウイは、レアスキルの蒐集(しゅうしゅう)という宿命と便宜を課せられた反面で、コモンスキルの入手に難を(きた)した……筈であった。それが【解体W】と【落としもの】の効果によって、PKからのスキルの徴収という抜け道が開かれ、更に今度は犯罪者からのスキルとステータスの没収にまで発展したというのだ。

 【スキルコレクター】の効果によってシュウイのスキル枠が撤廃されている事を考えると、これは(いささ)か問題なのではあるまいか。



「いや、一見すると問題のように思えるが、その実情には()して変化は無いぞ?」



 そう指摘した木檜(こぐれ)(いぶか)るような視線が向けられるが、何人かはその意味するところに気付いたようだ。



「確かに……『見習い保安官』と『治安の執行者』が無くても、【解体W】と【落としもの】が同じような事をやっていましたね」

「違いと言えそうなのは、スキルや称号をごっそりと没収するようになった事ぐらいで」

「いや……それが大問題なんじゃないのか?」

「しかしそれは、証拠品となりそうな所有アイテムが没収できなくなった事の埋め合わせだぞ? プレイヤーの立場に立ってみれば、どちらが得なのか損なのか、簡単には言い切れないと思うが?」

「それは……そうか」

「つまり……今になってチートだ何だと言い出すのは……」

「運営サイドとして(かなえ)(けい)(ちょう)を問われるだろうな。何かの手を打つのなら、もっと早い時期にやっておくべきだった」

「それに――だ、『見習い保安官』と『治安の執行者』の性質を考えると、PvPには関与しない筈だろう」

「あぁ……確かに」

「それは吉報……と、言えるのかな?」

「ジョブと称号は仕事しないかもしれんが、【解体W】と【落としもの】は通常営業するんじゃないのか?」

「だからそれは、今までと何ら変わらないという事だろうが」

「う~む……」


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