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第百三十七章 ペンチャン村滞在記(三日目) 1.朝食時の打ち合わせ

 幼馴染みたちからのアドバイス――と懸念――を胸に、今日もSRO(スロウ)にログインしたシュウイ。可愛いペット――幻獣と進化種と変異種――に挨拶(あいさつ)を済ませ、朝の食餌を与えてから、(おもむろ)に宿舎の食堂に向かう。

 エンジュとモックとともに朝食の席に着いたシュウイは、頃合いを見てエンジュに問いを投げかける。【彫金】スキルを取る気は無いのかと。



「う~ん……【彫金】ですか」



 【彫金】は【鍛冶(基礎)】から派生する二次スキルである。アクセサリーの作製にも必要となるため、エンジュも【鍛冶(基礎)】はキャラクタークリエイトの段階で取得しているのだが、思うところあってこれまでは積極的に育ててこなかったスキルであった。

 それというのも、職業が確定前に下手に【鍛冶(基礎)】を育ててしまっては、宝石職人(ジュエラー)ではなく鍛冶師への転職を薦められる(おそれ)があったためである。鍛冶場でトンテンカンと鉄床(かなとこ)を叩くつもりなど無いエンジュとしては、余計なリスクを冒す訳にはいかなかったのだ。



「いや、それは知ってるけどさ。既に宝石職人(ジュエラー)の見習い職は確定してる訳じゃん? だったらそろそろ育てておいてもいいんじゃないかって思ってさ。今なら鍛冶職人にも伝手(つて)がある訳だし」



 練習用の金属片だって、融通してもらえるかもしれないよ――などと言われれば、エンジュの気持ちも動いてくる。

 ちなみに、今になってシュウイがこういう話を持ち出したのは、昨日プラチナを含む鉱滓(こうさい)を確保する機会があったから……という事にしてある。

 実際にはその後で、【錬金術(邪道)】が中級にランクアップした時に得た【添加】スキルの応用例として、象嵌(ぞうがん)細工が示された事が切っ掛けなのだが。


 その後テムジンに確認を取ったところ、〝象嵌(ぞうがん)(めっ)()も【鍛冶】のスキルには無い。派生スキルにはあるかもしれないが、今のところ報告されてはいない〟――という回答を貰ったのだ。

 ともあれそういう事情では、ここで象嵌(ぞうがん)の事など漏らす訳にはいかない。シュウイが持つ邪道アーツの件は言わずもがな。


 よって、入手したプラチナから宝石の台座を連想したという事にしてある。まぁ(もっと)も、



「今の僕のレベルだと、鉱滓(こうさい)からプラチナを取り出すのは無理なんだけどね」



 カナが言うには、プラチナの融点は鉄などよりも高いため、普通の炉では融かす事すら(おぼ)(つか)()いのではないかとの話だった。まぁ、テムジンにはサンプルを送ってあるし、製錬できないかどうか試してみるとの事だったが。



「けど、練習ならプラチナを使う必要は無くって、銅か何かでもいい訳じゃん? だったら、この村の鍛冶場からでも貰えるかもじゃん?」

「確かに……」

「どうせ【彫金】の取得を視野に入れてるのなら、今のうちに鍛冶スキルを育てておくのもありですね」



 シュウイも――【添加】スキルの応用先として――興味が無い訳ではないのだが、生憎(あいにく)と「スキルコレクター」の制約(のろい)背負(しょ)っているシュウイは、通常の方法でのスキル取得がほぼ不可能になっている。ただそれでも、行動の反復によって該当するスキルを獲得する事までは禁じられていないので、



(……ボルマン親方のところで鍛冶の真似事でもさせてもらえたら、スキルが拾えるかもしれないからなぁ……そういう事態になった時の準備は必要だよね)



 ――と、エンジュの修行を隠れ蓑に使う気が満々なのであった。

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