第百三十五章 ペンチャン村滞在記(二日目) 4.村の鍛冶屋~風雲急変~
さて――思いがけない収穫に頬を緩め、ルンルン気分で鍛冶場へ戻ったシュウイとエンジュ。捨てる筈だった鉱滓は、抜かり無く全てシュウイのアイテムバッグに収納してある。
足取りも軽く立ち戻り、任務終了の報告をしようとしたところで、鍛冶場の隅に積んである石の山に気が付いた。案ずるにこれこそが、あのプラチナやチタンの原石なのであろう。そう思うと何やら有難味も違ってくるような気がする。
まじまじと原石の山を凝視している二人に気付いたのか、ボルマンが説明してくれたところでは、やはりこれが件の鉄鉱石らしい。
そう確認できた時点で、シュウイはどうやってその産地を訊き出したものかと思案していたのだが、エンジュはまた違う視点から鉱石を眺めていたらしい。
「……これってやっぱり、来る途中で採った原石とは、産地が違うみたいですね」
そりゃ、来る途中では採集できなかったのだからして、産地が違うのは理の当然……とばかりは言い切れない事情があった――所謂ゲーム的な事情が。
「あー……何かの条件を満たしていないと採掘できない――って可能性?」
「えぇ。一応考えていたんですけど……でも、母岩の様子が違うみたいですし」
「へぇ……そうなんだ」
シュウイはそこまで気が回らなかったが、さすがに宝石職人を目指しているエンジュは違っていたらしい。〝論より証拠〟――とばかりに、アイテムバッグからパワーストーンの原石らしいものを取り出して説明してくれた。成る程、確かに母岩の種類が違っているようだ。こんなところにまで拘るとは、さすがにこのゲームは奥が――もしくは業が――深いと、シュウイは感心するばかりであった。
だがしかし、この会話を聞き咎めた者がいたらしい。
「……なぁ、ちょっといいか? お嬢ちゃんは石の事に詳しいのか?」
幾分か疑わしそうな表情を浮かべながらの、鍛冶師のボルマンの問いに対して、
「あ、あたし宝石職人見習いなので」
――そうエンジュが答を返したのが、その後に続く一連の事態の引き金となった。
「宝石職人だと?」
聞き捨てならぬという表情で、ジロリとエンジュを睨め付けるボルマン。思わずヒッと悲鳴を上げかけたエンジュを守るかのように、シュウイが然り気無くその前に立つ。それを見て、ボルマンも自分の振るまいに気付いたようだ。
「あ、あぁ……すまねぇ。脅かすつもりは無かったんだ。で――宝石職人ってのは間違い無いんだな?」
「え、えと……見習いです。まだ本職じゃありません」
「そうか……見習いってのはどれくらいの事ができるんだ?」
「え? そ、そうですね。原石を磨くくらいでしょうか」
「研磨までは問題無くできるんだな?」
「い、いえ……その……研磨が難しい石もあるんで、全部だとは……」
ふむ――と頷いたボルマンであったが、やがて頭を巡らせたかと思うと、今度はシュウイに問いかける。
「お前もか?」
「いえ、僕はそっち系のスキルは持ってません。錬金術なら少し……」
――と、言いかけたシュウイの台詞を遮って、
「錬金術だぁっっ!?」




