第百三十五章 ペンチャン村滞在記(二日目) 2.村の鍛冶屋~頼まれた仕事~
モックが抜けて二人組となったシュウイとエンジュが連れて行かれたのは、村の外れにある鍛冶場であった。案内の男は二人を鍛冶師らしき男に引き渡すと、何か満足したように帰って行った。
「……つーてもなぁ、子供にやれそうな仕事ってのはそんなに無ぇんだが……あぁ、あれがあったか……」
何やら合点した様子の鍛冶師――ボルマンと名告った――は二人を鍛冶場の裏手に連れて行くと、
「こりゃ製錬の時に出る金屎なんだがな。邪魔っ気だから捨ててきてほしいんだわ。ベルズに聞いたとこじゃ、そっち系のスキルを持ってんだろ?」
どうやら案内の男はベルズというらしい。【引っ越し】や【修羅】の実態は目にしていないものの、その手のスキルを持っている筈だとは気付いているようだ。ボルマンにもその旨を伝えたという事なのだろう。
鍛冶師の手伝いなどと言われて緊張していたシュウイとエンジュであったが、これなら昨日もやった運搬仕事と変わりは無い。安心して作業に取りかかれるというものだ。
……尤も、人物評定の任務に携わっているらしいベルズの思惑としては、マンツーマンの指導を通してシュウイの為人を見極めてほしかったのだろうが……だったら何で、荷運び特化のスキル持ちのような情報を伝えたのか。
まぁ、村の側にも色々と混乱があるのだろうが……それはともかく、
「えーと……二つほどお訊きしたいんですが」
「あぁ? 何だ?」
「まず、捨てると言ってもどこへ捨てればいいんでしょうか?」
「あぁ……そうだな、お前さんらが片付けたって荒れ地があるだろ? あそこへ適当にうっちゃっといてくれればいい」
「あ、はい。解りました。それで――この鉱滓って不要品なんですか? 再利用の当てとかは?」
リアルなら何か再資源化の動きが出て来る筈で、SROでもそれを踏まえた展開が隠されているのでは――と怪しんだシュウイが確認するが、
「あぁ? こんな金屎、何の役に立つってんだ。構わねぇから捨ててきてくれ」
「あ、はい。解りました」
少なくとも、この村ではリサイクルの動きは無さそうだ。それなら深く考えず、さっさと捨てに行った方が良いだろう。
ボルマンが鍛冶場へ引っ込んだところで、シュウイは【引っ越し】と【修羅】を発動する。その後はもはや手慣れた作業である。エンジュの手伝いもあってサクサクと鉱滓の山を片付けると、気楽な様子で荒れ地へと向かった。
目的地に着いて、後は適当に鉱滓を散撒いて終わり……に、しようとしたところで、シュウイはふと気が付いた。
(……これって、要するに金属を製錬した後の残りだよね? だったら、少しはレアメタルとかが含まれていたりしないかな?)
どうせ不要品の産業廃棄物だとお墨付きを貰っているのだ。使えるというなら自分が頂戴しても、どこからも文句は出ないだろう。
そう考えたシュウイは、【鑑定EX】を使って目の前の鉱滓を鑑定したのだが……
(うわ……これって大当たりじゃん)




