第百三十四章 篠ノ目学園高校 5.放課後~親水公園~(その4)
「まず【マッピング】だけど……確かにコモンスキルではあるけど、比較的珍しい方に入ってたと思う。準レアというところじゃないかしら」
「あー……だったら、【スキルコレクター】が色目を使う可能性はある訳か」
「色目……って、また妙な言い回しを……」
「せめて〝秋波を送る〟ぐらいにならないのかしら」
「で、【リズム感】は?」
幼馴染みたちからの不評などものともせずに追及する蒐一に、要も苦笑を隠せない。
「そっちはレアでも準レアでもないんだけど……蒐君、【大道芸】を持ってたわよね?」
「「「――あ」」」
言われてみればシュウイの【大道芸】には、(大道芸タイプの)芸能スキルを拾い易くなるという効果がありはしなかったか?
「そうすると……【踊り念仏】もそうなのかな?」
「いや……確かに〝踊り〟って付いちゃいるが……」
「芸能スキルっぽくないよね。特に後半が」
「そうね。〝念仏〟だから宗教系のスキルなのかも」
「あー……『霊魂の友』って称号を持ってたしなぁ」
「【死霊術】も持ってたよね? 蒐君」
「勘弁してよ……」
オカルト系がとことん苦手な蒐一が、それこそゾンビのような顔付きになる。
だが、苦手であろうと何であろうと、拾ったスキルは手放さないのが【スキルコレクター】である。であればその保有者であるシュウイとしても、活用の方法を探らねばならない。
……シュウイの憂色が更に深みを帯びた。
「ま、まぁ【踊り念仏】は知らんけど、【猩々】についちゃ少し聞いた事があるぞ」
「そうなの!?」
意外な話を聞かされて、蒐一の憂色が霧消する。どうやら気を惹けたようだと見て取った匠が、βテスターならではの知識を披露する。
「いやな蒐、【猩々】ってのはそれなりに有名なスキルなんだよ」
「少なくともβプレイヤーの間では――ね」
「お酒造りのスキルなんだよ」
「酒造り……あぁ、『猩々』って、そっちかぁ」
「猩々」とはオランウータンの異称でもあるが、酒を好む想像上の生き物の名前でもある。ショウジョウバエなどはアルコールを好む事から、「猩々」に因んで名付けられた種名である。
「俺も詳しくは知らないんだが、何でも正確には酒の品質を高める効果があるらしくてな」
「元々は何とかいうアーツの一部だったんだけど……」
「そのスキルだけを欲しがる人が多くって、運営が独立させちゃったの」
「うわぁ……」
何とも使い処を選びそうなスキルである。蒐一が頭を抱えていると、
「あら、使い処なら直ぐに出て来ると思うわよ。ほら、『技芸神の神殿』」
「「「あ……」」」
――成る程。モックの付き添いで神殿とやらに行く事は決まっているし、神への供物と言えば今も昔も、リアルでもゲームでも「御神酒」である。その品質を高める事ができるというなら、これは願ってもないスキルではないか?
「……早めに有効化して、使い込んでおいた方が良いのかなぁ……」
次回からゲーム本編に戻ります。




