第百三十三章 運営管理室 7.下馬評・拾得スキル(その3)
またしても不本意な「想定外」が出来しそうなお膳立てに、打ち揃って頭を抱え込むスタッフたち。どうしてこう面倒な展開が続くのか。
「……決まってるだろう。ややこしいスキルばかり集める、【スキルコレクター】というスキルのせいだ」
「……その前に、そんな曲者スキルが山ほどあるのが、問題の根本原因なんだがな」
「………………」
その〝曲者スキル〟を面白がって設計した憶えのある面々は、指弾に対して黙る事しかできない。
「いや……それもそうなんだが、何でまたこの二つを一緒に配置したりしたんだ?」
別の場所に置いておけば、少なくともこういう危険な事態は避け得た筈だろう。
「スキルの配置はランダム……と言うか、適当に放っぽっといただけだからなぁ……」
「【スキルコレクター】の彼がいる限り、その遣り方では拙いかもしれんな」
「だが、ゲームの舞台となる場所の全てでスキル配置を見直すのは大事だぞ?」
「それはアレだ、彼が訪れそうな場所を優先すればいいんじゃないのか?」
「忘れたのか? 彼は【迷子】という凶悪スキルを持っているんだぞ?」
「今回【方向音痴】も目出度くそのラインナップに加わったな」
「…………」
微妙な雰囲気になりかけたところで、一人のスタッフの声がその雰囲気を破る。
「〝集める〟という単語で思い出したが……木檜さん、【猩々】というのは確か、何かのアーツの一部を独立させたものじゃなかったですか?」
「あぁ、【踊術】の事か? 確かに【猩々】は【踊術】の一スキルだったんだが、酒の品質を高めるという事で、呑兵衛やドワーフのβテスターからの要望が多くてなぁ……。このスキル単独でも取得できるようになったんだ。……それがどうした?」
「いえ……例えばですけど、【猩々】のスキルを持っていると、他の【踊術】スキルも拾い易くなるとか、【踊術】のアーツそのものを得易くなるとかって……ありませんよね?」
不穏な指摘にスタッフ一同が身を強張らせたが、
「いや、そんな話は聞いてないな」
――という、木檜の回答に安堵の溜息を吐いた。尤も、その直ぐ後で、
「と言うかだな、その手の事態を引き起こすとしたら、【スキルコレクター】か【大道芸】が先じゃないのか?」
……という徳佐の身も蓋も無い指摘に、苦い溜息を吐く事になったが。
「それはともかく木檜さん。その【踊術】というのはどういうアーツなんですか? 自分は聞いた事が無いんですが」
「さて……抑βテストの時には未完成だったからな。俺が知ってるのも、【猩々】以外だと……バフ・デバフ系のスキルがあった事ぐらいしか憶えてないな」
「舞踊系のスキル……じゃなくて、アーツなのは確かなんですね?」
「あぁ、それは確かだ」
「だったら……直接攻撃系のスキルは無いですかね?」
「さぁな。何だったら開発の連中に確かめておくか?」
「お願いします。……知っておいた方が良いような気がするんで」
「踊術舞芸帳」……なんちゃって。




