第百三十三章 運営管理室 2.空回りドロップ品換装(その1)
「何とか間に合いそうだな」
「あぁ、村へ入る前にモンスターを狩り始めた時には、どうなる事かと思ったが……」
モニターを観ながら安堵の溜息を吐いているのは、最早お馴染みとなった運営管理室の面々である。
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――読者は憶えておいでであろうか。
ともすれば即行でペンチャン村の課題をクリアー、その足で神殿に向かいそうなシュウイ一行を足止めするための策として、暫時的にドロップ品の品質を上げるという禁じ手を木檜が指示した事を。
一時的とは言え非常措置であるとは言え、一部のユーザーに便宜を図るのは――と、気の進まない様子で作業に取りかかろうとしたスタッフたちの目の前で、モニターの中のシュウイがとんでもない――それこそスタッフを総毛立たせるような発言をかます。
『……思うんだけどさぁ、僕らって自分勝手に村にお邪魔する訳じゃない? 何か手土産が要るんじゃないかな?』
……疫病神は何を言い出した――と、息を呑むスタッフたちの目の前で、無情な会話が続けられる。
『あぁ、確かに……』
『そう言われればそうですね』
「何を言い出すかと思えば……」
「何とも嫌な雰囲気だな……」
「止めろ! 余計な気を回すんじゃない!!」
――と、顔色を悪くするスタッフたちを尻目に、運命的な――或いは悪夢のような――会話が続けられる。
『村へ行く前に、手土産となるものを確保しようと言うんですね? 先輩は』
『モンスターを狩るんですか?』
『それか、山菜とか薬草とかだね。カナちゃんたちがナンの町の手前で、薬草を採集したって言ってたし。……確か二人とも、採集系のスキルをもってたよね?』
固唾を呑んで画面を見守るスタッフたちの前で、無情にも二人の新人が肯定の答を返し……
「畜生っ!! ドロップ品差し替え、待った無しじゃねぇかっっ!!」
「喚くな!! 口を動かしてる暇があったら手を動かせ!!」
シュウイがサクサクと――それはもう腹が立つほどサクサクと――モンスターを狩りドロップ品を回収していくのと併行して、哀れな管理室スタッフによるドロップ品差し替えの作業が大車輪で進められる。
だが……生憎な事に、差し替え作業の進捗よりも、シュウイの狩りの方が少しだけペースが速いようだ。
絶望が管理室を覆わんとしたその時――
「あのぉ~……今の段階でドロップ品を差し替えるのって、少し拙いんじゃないですかぁ~?」
「……何?」
「どういう事だ? 一言」
「えっとぉ……だからぁ~……」
怖ず怖ずといった体で一言夕子――別名、一言多い子――が口にしたのは……哀れなスタッフたちを救うかのような、もしくは彼らの懸命の努力を嘲笑うかのような可能性であった。




