第百三十一章 市内(文化祭代休) 8.ファミリーレストラン「ファミリア」(その7)
――蒐一の事情説明はまだ続いている。
「まぁ、その辺の原因追及はいつかに廻すとして……素材のドロップ傾向も何だかおかしかったんだよね」
「おかしい?」
「どういう事? 蒐君」
「説明してもらえるのよね?」
【迷子】や【方向音痴】は蒐一個人の問題だが、ドロップの傾向となると自分たちにも無関係ではない。彼らが身を乗り出したのも宜なるかなであろう。
で――蒐一の説明を聞くに及んで、
「成ぁる程……確かに何か作為的だな」
「村人さんたちが必要とするものが村の近くにあって、プレイヤーの素材になりそうなものが遠くにあるのかぁ」
「偏った配置の目的として、考えられる可能性は二つね。何かプレイヤー向けのクエストに関係しているのか、それとも村人たちの便宜にあるのか」
「けどよ要、最初の可能性はまぁいいとして、後の可能性は無いんじゃないのか?」
「何でだよ? 匠」
後者の可能性を言下に切って捨てた匠に蒐一が疑義を呈したが、それに対する匠の回答は、
「そりゃあれだ。村の生活必需品云々という説明だと、村人の日常行動までリアルっぽくシミュレートされてる事になるだろ? プレイヤーの多いトンの町ならともかく、村外れの小村でそこまで凝った舞台設定にするか?」
「あ……成ぁる程」
――と、納得しかけた蒐一であったが、今度は要が異論を呈する。
「あら? それはどうかしら? 例えばその村への訪問者が多くなると運営側が想定していたら……それなりに高度なAIや対人スキルが必要になるでしょう? そうでなくてもSROは……」
「あぁ……住民との交流を謳っていたんだっけな」
「ねぇねぇ要ちゃん、それってつまり、村が何かの舞台になるって事?」
「あれ? それだと……」
「どっちの解釈を採っても、何かクエストに関係するって事……いや」
ここで匠は別の可能性に思い至ったらしい。
「要の言うとおりだとしたら、この偏った分布は、村人の生活活動によるものだとも……いや、そりゃ無いか……」
「えぇ。モンスターの分布に濃淡があるならともかく、偏りがあるのはドロップ品の内容なんでしょう? だとしたら、村人の活動が原因だとは考えにくいわね」
「……という事はつまり、何かのクエストが用意されてるって事だよね」
「ま、そっちは始まってみりゃ判るだろ。それより蒐、村の様子とかはどうなんだ?」
「あ、うん。夕方に着いて泊めてもらっただけだから、まだ詳しい事は判んないけど――」
そう前置きして蒐一は、村での様子を報告する。
「へぇ、巡礼を泊める村かぁ」
「史実の善根宿みたいなものかしらね。村ぐるみの」
「無料で泊める代わりに、ちょっとした仕事を頼む事にしてるみたい。まぁ、トンの町からも結構離れてるみたいだし、宿代とか貰うよりも実利的なのかもね」
「で、巡礼向けの宿泊所みたいなのがあるんだな?」
「うん、巡礼向けって事になってるけど、本当は僕たちプレイヤー向けじゃないのかなぁ。ログアウトできる個室を貰えたし」
「益々クエスト臭いよな」
――以上で大体の報告を終えたと考えた蒐一は、今度は自分からの質問を持ち出す事にする。お題は無論スキルについてである。
【大道芸】【エリマキ】【息継ぎ】についての情報は、タコ平から教わる事ができた。また、【方向音痴】と【水玉模様】については、今回その身で試す事になった。
【暗器術(中級)】については検討済みだとして……残っているのはナンの町で拾った【水芸】【お絵かき】【口笛】【成長】【魔力回復】【爆発】と、PKから没収したと覚しき【詐称】【遠見】【ウィンドカッター】【看破】 【隠密】【盗賊】【あっち向いてホイ】。
【気配察知】【追跡】【採集の心得】が何れも「W」表記になっているのは、これも恐らくPKから没収したスキルを【整理整頓】が一つに纏めたのだろう。【鑑定EX】がLv5に上がっているのもその口で、PKから回収した【鑑定】を統合したのだろうか。
「……また、曲者っぽいスキルばかり拾いやがって……」
「実際にPKが持ってたんだから、〝曲者っぽいスキル〟なのは仕方ないだろ」
次回で本章も終わりです。




