第百三十一章 市内(文化祭代休) 1.スポーツ施設
久々のリアル回という事で本章は少し長くなりますが、どうか宜しくお付き合い下さい。
「や~、SROでの行動に何か役立つんじゃないかって来てみたけど……結構楽しめたな」
「うんうん、崖登りだなんて、この先もありそうなシチュだもんね♪」
「それは良いけど茜ちゃん……壁を蹴ってバク転からの着地っていうのは、やっぱり遣り過ぎだと思うんだ」
「係の人が飛んで来たものね……」
「出禁喰らってもしらねぇぞ」
「う……今後は自重する……」
お馴染みの幼馴染み四人組が談笑しているのは、とあるスポーツ施設内の喫茶店。
このところ文化祭というリアルの用事のせいで、集まる機会を持てなかった四人組としては、久しぶりのミーティングになる。
「本当は昨日も休みだったってのによ」
「あ~……何か〝クラブの用事〟があったんだっけ」
「……あれ? 匠君、クラブなんか入ってた?」
「茂のやつが名前だけ貸してくれってから貸したのによ……クラブで活動した事にするから、口裏合わせのために顔を出せって」
「あ~……そういう事かぁ」
「まぁ、どうせ要ちゃんも委員会で来れなかったんだし」
「私は正真正銘、委員会の仕事だったんだけど」
……というような経緯もあって、彼ら視点では本当に久々の顔合わせという感じなのであった。
で、そんな彼らがなぜまた、〝とあるスポーツ施設内の喫茶店〟などという微妙な場所で塒を巻いているのかと言うと、
「僕、初めてやったんだけど……結構面白いね、ボルダリング」
「おぅ、SROの攻略に使えんじゃないかって聞いた時には、半信半疑だったんだけどな」
話の発端は、近場のスポーツ施設にボルダリング――或いはスポーツ・クライミングとも――のコーナーができたという話を茜が訊き込んで、一緒に行こうと要を誘った事にあった。
最初は難色を示した要であったが、ゲーム廃人としての第二の天性が、〝リアルでボルダリングを体験しておけば。SRO内で似たような局面に出会した時に使えるのではないか〟――と囁いたらしい。結果的には男子二人も巻き込んで、ここへとやって来たという次第なのであった。
「だけどよ要、今更だけど崖登りが必要なクエとか、SROにあったっけか?」
「本当に今更だな、匠」
「これまでそういうシチュエーションに出会った事は無いわね。けど、私たちの場合だと、岩場に生えている草の採集……なんてケースも考えられるのよ」
「あとは城壁を登っての侵入とか」
「どこの怪盗クエだよ、そりゃ」
「なぁ匠、クエストにあるかどうかは知らないけど、崖そのものはあるぞ。トンの町の郊外に」
蒐一の言うのは、嘗てテムジンたちと原石の採集に赴いた、「フォンの切り通し」の事であった。あの時は崖登りなどという目覚ましい真似はせず、温和しく転石を採集したのだが、もしも崖登りに使えるようなスキルを持っていたら、異なる展開になったかもしれない。
「あー……そう言や、そんな話もあったっけな……」
既に崖というロケーションが、それも「始まりの地」たるトンの町の郊外に用意されていたとすると、今後同じような状況に出会す可能性は低くない。
それを考えれば、やはりリアルでボルダリングを経験、もしくは訓練できる事の利点は小さくないだろう。必要に応じてここを利用するのも良いかもしれない。……利用者がいなくて閉鎖されたしなければ――の話だが。
「んじゃ、そろそろ蒐の訊問に移りたいとこだけど……場所を変えるか?」
「そうね。話は長くなりそうだし」
拙作「転生者は世間知らず」ですが、書籍版二巻発売を記念して、本日20時頃にSSを公開の予定です。宜しければこちらもご覧下さい。




