第百三十章 ペンチャンの村へ 5.運営管理室(その2)
「ペンチャンの村での資格審査クエスト、あれの具体的な内容はどうなっている?」
「村人たちからの手伝いの依頼ですね。断ったらそこでアウト、失敗してもアウト。成功した場合は、どうやってそのクエストを熟したかによって判定が異なります」
「具体的には?」
「金を渡して解決しようとした場合、手持ちのアイテムを渡して解決しようとした場合、自分たちで行動して解決しようとした場合――の順に好感度が上がります」
「早期解決に目を奪われると失敗する訳か……俺が言うのも何だが、嫌らしい仕様になってるな」
「まぁ、好感度の低い形で成功した場合には、追加でクエストが出されますから」
「……面倒になってそれを断ったら、その場でアウト判定を喰らうんだな?」
「そうなります。ただ……一応は好感度に応じて村人の態度も変わりますから、目敏いプレイヤーなら気付くと思いますよ」
「その点に関しては不安は無いんだが……」
――そう。
トンの町で長い事住人と交流してきたシュウイなら、直ぐにでも村人の好感度を上げる事ができるであろう。審査クエスト一発合格なんてのも夢ではない。
しかし――それは取りも直さず……
「……即行でクエストを完了して、そのままペンチャンの村を出る事になりかねないんですよねぇ……」
「面倒な状況になってきたな……」
シュウイの実力と管理AIの思惑から判断すれば、シュウイは危なげ無く審査クエストを突破し……そして、その足で神殿へと向かうであろう。
運営側としては好ましからざる展開である。
「面倒な依頼を宛がう訳にはいかんのか?」
「そこまですると管理AIの機嫌を損ねる可能性がありますし……抑それ以前に、〝面倒な依頼〟なんてものが用意してありません」
「好感度判定のためだけのミニクエストですからねぇ……」
「達成困難な依頼なんてのは、クエストの意味からすれば本末転倒ですし」
「うむ……」
そうなると、運営側として打てる手は……
「新規のイベントを設計する余裕は……」
「「「「「ありません!!」」」」」
「抑、イベントの新規設計となると開発部案件です。開発部から怨まれますよ?」
「せめて管理室の裁量でできる範囲にしておかないと」
「うむ……」
暫し俯いて考え込んでいた木檜であったが、やがて徐に顔を上げると、どこか吹っキレたような表情で告げる。
「この状況で管理室にできる方策としては……ドロップ品やドロップスキルの品質を向上させて、村に留まるモチベーションを高めてやる事ぐらいしか無いと思うが?」
――その提案に息を呑むスタッフ一同。
「それは……確かに留まる理由にはなると思いますが……」
「そこまでやって大丈夫なんですか?」
「特定のユーザーに便宜を図るのは拙いのでは?」
心配そうな部下たちの懸念を、しかし木檜は一蹴する――悪い笑顔を浮かべながら。
「大丈夫、何かあったら開発部が責任を取ってくれる約束だ」
(「「「「「うわぁ……」」」」」)
――斯くして、ドン引きのスタッフ一同の懸念を他所に、運営管理室の方針が決定したのであった。




