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第百二十八章 脱獄クエスト顛末 2.脱獄クエスト(その1)

 さて、SRO(スロウ)始まって以来の大規模MPKを――心ならずも――引き起こした四人組であるが……うち三人は温和(おとな)しく任意同行に応じたが、一人は抵抗して逃亡した。

 ちなみに逃亡したのは、遠距離攻撃の魔法を持っていないという理由で見届け役を割り振られた剣士の男であった。まぁ、隠密系のスキルを一切持ってないのが裏目に出て、激昂したツインヘッドグリフォンの群れに敢え無く、それも真っ先に踏み潰されたのであるから、MPKに関しては情状酌量の余地もあった……温和(おとな)しく裁判を受けていれば。なのに暴れて逃亡したりするから、無駄に罪科が積み上がった訳で、ご愁傷(しゅうしょう)様としか言いようが無い。

 連行された三人のうち、罰則――ゲーム内時間で一ヵ月の鉱山労働――を聞いて納得できないとした一人は退会を表明。ゲーム内では処刑扱いになって、アカウントの再取得は許可されなかった。

 残り二人は温和(おとな)しく収監に応じたのだが……彼らの身の上にどういう事態が降りかかったのか、それを顧みる事にしよう。



・・・・・・・・



 それぞれ別個の独房に収監中の二人の前に、クエストの訪れを告げるウィンドウが浮かんだのが、昨日の午後の事だった。



《特殊クエスト「牢からの脱獄」が発生しました。クエストを受けますか? なお、このクエストを受注した場合、アウトロー扱いになります。 Y/N》



 唐突なクエスト発生に驚きはしたものの、脱獄クエストの存在は(かね)てから話題に上っていた事でもあり、二人は早速に密談を交わす。収監されてもチャット機能が制限されていなかったのは、運営がこういう展開を想定していたからなのか。


 ――そして(しば)しの相談の結果、



『――じゃ、俺がクエスト受けてみるな』

『あぁ。上手くいったら、そん時はヨロシク』

『桶々』



 どうもクエストの難易度が不明なため、片方だけがそれを受けてみて、首尾好くいけばもう一人も……と、甘い考えを抱いたらしい。

 ……この後で脱獄クエストがもう一度発生する――と、無条件に思い込んだ理由については不明であるが……それはともかく、



『おっ!? 《Y》を押したら床にマークが出て来たぞ!』

『どこだ?』

『ベッドの下。今から触って……おっ!?』

『何だ? どうした?』

『床が崩れて……あー、こりゃ抜け穴か』

『抜け穴?』

『みたいだ。とにかく行ってみるわ』

『桶々。幸運を』

『アディオ~ス』



 ……などという果てしなく緩い空気の中、(いささ)能天(のうてん)()な大脱走が始まった。



・・・・・・・・



「はー……(えら)く長いトンネルだったけど……こりゃどこだ?」



 今にも崩れそうな……と言うか、実際に所々で崩れていた地下道を潜り抜けて現れた先は、どこぞの小屋の中であった。正確には小屋の中の床下収納空間である。

 恐る恐る上げ蓋から外――小屋の中――を窺うが、追っ手が待ち構えている様子は無い。ままよとばかりに蓋を開けて這い出し、小屋の中を(あらた)めてみると、



「第一武器発見~♪ ボロっちいけど、『初心者の剣』でないだけマシか? 何しろ逮捕された時に、金も武器もアイテムも、全部没収されたもんな」



 嬉々としてその剣を手に取ったところで、再びメッセージウィンドウがポップする。

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― 新着の感想 ―
[一言] 〉この後で脱獄クエストがもう一度発生する――と、無条件に思い込んだ理由 そりゃツインヘッドグリフォンよろしく試してみればなんかわかるっしょ的な考え無しのゲーム脳だからでしょうね
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