第百二十六章 篠ノ目学園高校文化祭(二日目) 3.食堂~巡礼問題~(その1)
破損箇所に関する取り扱いは一応定まったが……どうせ蒐一の事だ、他にも何かやらかしているだろう――と追及の手を緩めない幼馴染みたち。
「やらかしって言われるのも心外だけど……ちょっと気懸かりなネタは拾ったよ」
「あー……やっぱりか」
「安定の蒐君だよね」
「で、何を拾い出してきたのかしら?」
「うん、『巡礼』――って知ってる?」
「「「――巡礼?」」」
疑問形の声が三つ揃ったのを聞いて、これは初耳の情報らしいと判断する。
「これ、僕だけが拾ってきた情報じゃなくってね。エンジュとモックも別ルートから同様の情報を拾って来たんだよ」
そう前置きして蒐一は話し始める。奇しくも三人で手分けして探り出した形になったその情報を。
そして――その情報を聞かされた幼馴染みたちの反応は、
「改めて振り返ってみると、まずクエストが降りて来たタイミングがおかしいわね」
「だな。多分だけど、他の吟遊詩人より早いんじゃねぇか?」
「ねぇねぇ蒐君、他の吟遊詩人さんたちにも、巡礼クエストって発生してるの?」
「そう言われても……」
「少なくとも、巡礼に関してワールドアナウンスは流れてないよな」
「それって吟遊詩人がマイナー職だからじゃん?」
一応は蒐一も反論を試みるが、幼馴染みたちは――蒐一のこれまでの前科に鑑みて――モックだけ前倒しに始まった可能性が高いと判断。当の蒐一本人も、内心ではこれを肯定していた事から、その前提で議論が進む。
「いや蒐、マイナー職だろうと何だろうと、他にも吟遊詩人がいる以上、必要な情報は告知するのが当然だろ」
「それが無いという事は……?」
「改めて通達する情報は無いという事。つまり、少なくとも現時点では、必要な情報は全てオープンになっているという事よね」
「だったら……」
クエスト入りが多少早かろうと遅かろうと、大した違いは無いのではないか。そう言い募ろうとする蒐一であったが、幼馴染みたちの反応を見るに、問題はそこではないらしい。
「地元の吟遊詩人が言ってたように、『鼓吹の鈴』を手に入れたのは、クエストが始まるよりも前。けど……モックという子が鈴を伴奏に使い出したのは、クエスト発生より後の事よね?」
「うん……その筈だけど……?」
「つまりだな蒐、鈴の入手とクエストの発生の間にタイムラグがあり過ぎるんだ。とすると、鈴の入手は必要条件かもしれないが十分条件じゃない、何か他のトリガーがあったんじゃないかって思えるんだが……」
「その有力候補である〝鈴による伴奏〟は、クエストが降りて来た時点では始まってなかった訳だから除外。すると候補が無くなっちゃうんだよ蒐君」
「あー……うん」
シュウイに指導クエストが降りて来たのはPvPの直後だが、まさかアレがトリガーになったとも思えない。
「それとは関係無いけど、もう一つあるわ。巡礼の情報は、蒐君たち三人に同じタイミングで、しかも別々の住人からもたらされたのよね?」
「あ、うん。時間的にはそんな感じだけど?」
「情報がモックだけでなくて、他の二人にも通知されたって事が気になるのよ。蒐君の場合は百歩譲って、指導役だからという事で納得しても、エンジュって子は本来無関係の筈よね? なのにその子も巻き添え……って言うと人聞きが悪いわね。えぇと……同じ一味として扱われた事が少し気になるのよ。芸能職でもないのにクエストに巻き込まれたって事がね」
「あー……確かに」
「微妙におかしいっちゃ、おかしいわな」




