第百十九章 ナンの町~「ワイルドフラワー」~ 4.届けものクエスト(その2)
さて、そんな一幕茶番が二人の目の前で演じられはしたのだが、既にクエストを引き受けた二人としては、どうにかして受取人を捜し出し、預かった荷物を届けるしか無い。
とりあえずは役場や冒険者ギルドの職員たちと誼を通じておいて、雑談か何かの折に訊くしか無いだろう。
そんな具合にカナとセンの間で相談が一致したところへ、
「失礼します!」
「お、来たなフランセスカ。……紹介しよう。町役場で備品管理を担当してるフランセスカだ。フランセスカ、こちらのお嬢さんたちゃ『ワイルドフラワー』、水やら薬草やら原石やらをしこたま持ち込んでくれた功労者だ」
カナたち「ワイルドフラワー」の面々が引き合わされたのは、ナンの町役場で備品管理を担当している女子職員であった。水はともかくとして、「ワイルドフラワー」が提供した薬草や魔石などはさすがに無償提供という訳にもいかず、然るべき手続きを取るために、担当者に引き合わされたという次第なのであった。
後は任せたと言い残して上司氏が消えると、フランセスカというその職員と――一応は――「ワイルドフラワー」のパーティリーダーであるエリンとの間で手続きが進められてゆく。素より「ワイルドフラワー」も利益目当てではないため、代金などで揉める事も無く、滞り無く手続きが完了する。
――そのタイミングでカナはセンに目配せすると、
「失礼ですが――フランセスカさん?」
「はい?」
「イーファン郊外の山に住まわれている従魔術師の方に、心当たりはありますか?」
「え? ……はい、多分」
……どうやら二人は恙無く届け先を探し当てたようだ。
・・・・・・・・
実はフランセスカが室内に入って来た時に、カナとセンの目の前に半透明なウィンドウがポップアップしていた。
《届けものの受取人が現れました。荷物を引き渡しますか? Y/N》
寸刻硬直した二人であったが、その後の手続きはリーダーであるエリンが進めたために、二人の動揺が気付かれる事は無かったのである。
その後は……
(「ねぇねぇカナちゃん、何だかあっさりと届け先が見つかっちゃったけど……大丈夫なのかな?」)
(「運営の罠を気にしてるんなら、多分大丈夫じゃないかしら。メッセージウィンドウにも『受取人』って明記してある訳だし」)
(「う……ん、それはそうなんだけど……」)
(「難問を予感させた割りに、あっさりと尻窄みに終わったのが納得いかないって事かしら?」)
(「うん。『針小棒大』とか『鶏頭牛尾』っていうやつ? 『始めちょろちょろ中ぱっぱ』……は違うよね?」)
(「そうね……色々と間違ってるわね……」)
さて――カナとセンを不審がらせた、クエストの見かけ倒しな結末であるが……実は設定の段階では、ここまで「竜頭蛇尾」に終わるとは誰も考えなかった。
何しろ、ただでさえプレイヤーと接点の少ない町役場の、しかも備品管理担当職員の口癖など、上司や同僚を除けば知っている者は少ないだろう。故に、正解に辿り着くまで延々と訊き込みを強いられる筈であったのだが……ツインヘッドグリフォンによるナンの町襲撃とその防衛クエストなどというイレギュラーな事態が、開発・運営サイドの想定を見事に引っ繰り返してのけたのである。
ただ……この展開が完全に想定外で、運営側は流れに翻弄されるのみであったのかと言うと……必ずしもそうとばかりは言えない理由もあったのである。
・・・・・・・・
「実は……ウィルマさんからフランセスカさんに、お届けものを託かっていまして」
「はぁ……ウィルマから……」
受取人である事に間違いは無いようだが、あからさまに〝面倒な〟という表情を隠さないフランセスカ。まぁ、選りに選ってこの忙しい時に宅配便など届けられても――という心情は理解できる。
ただ……それも届けられた荷物の中身を確認するまでであった。
「……これは……ひょっとして!? 主任! 主任!!」
届けられた手荷物を抱えて脱兎の勢いで飛びだして行ったフランセスカに、置き去りにされた面々はポカンと間抜け面を晒すしか無い。
「……カナ、セン、一体何をやったのさ?」
「え、えと……」
「……頼まれた届けものを手渡しただけよ。別におかしな事はしていないわ」
「うん……」
「ぼくたちのマヨヒガ」更新しています。宜しければご笑覧下さい。




