第二章 篠ノ目学園高校(土曜日) 1.昼休み
リアルサイドの話です。
「おい、蒐、昨日はえらく疲れてたみたいだけど、何があったんだ?」
「あ~、例のスキルのせいで二倍働く羽目になったから」
「へ? そんなスキルあったか?」
「新しく拾ったスキルがね……詳しくは昼休みにでも話すよ」
「判った」
予鈴がなったので雑談を打ち切って授業の準備をする。さ、一時間目だ。
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「【落とし物】って……そんなスキルがあるのかよ……」
「確かにレアスキルだよね……」
「こういうのはレアじゃなくて、マイナースキルっていうんじゃないかな……」
僕たち――僕と匠と茜ちゃん――は屋上で弁当を食べながら話していた。
僕たちの通う篠ノ目学園高校は隔週で土曜日が休みなんだけど、今日は授業がある日に当たっている。土曜の授業は午前中で終わりなんだけど、うちの学校は少し変わっていて、土曜は三時間目と四時間目の間に昼休みがある。四時間目終了後に放課となると外食から遊びという流れになるので、せめて出費を減らして欲しいと保護者が申し入れた結果なんだそうだ。珍しいよね? 平日より品数は少ないけど食堂も一応開いてるから、育ち盛りの高校生は放課まで待ちきれずに、三時間目終了後に群がっている。保護者の思惑は成功したって事なんだろうか。
「で……Lv2に上がって、何か変わったのか?」
「うん、大幅に。落とし物を『する』から『拾う』になったみたい」
「お~、百八十度の転換じゃないか」
「何を拾うか判らないけどね……」
「気落ちしてる人の『気持ち』を拾うとか?」
「やめてよ! 本当になったらどうすんのさ」
一頻り騒ぎながら弁当を食べ終えたところで、匠が切り出した。
「で、蒐はこの先どうすんだ?」
「どう、って?」
「いや、どんなプレイをするつもりなのか気になってな」
「う~ん。基本スキルが全く無いから戦闘は無理っぽいし、かといって生産系のスキルも現状全く無いし……お使い?」
「何か昨日無双したって聞いたけど?」
「いや……無双ってほどじゃ」
「そうそう。『狂犬』ガッツを撲殺した程度だよな」
「撲殺!?」
「PvPだよ! 殺人鬼みたいに言わないでよ!」
「笑いながらいたぶり殺したって掲示板に書いてあったぞ?」
「あ~、『微笑みの悪魔』復活か~」
「……そのあだ名で呼ばないでよ、茜ちゃん」
「んじゃ、『惨劇の貴公子』の方か?」
「そっちも駄目……」
「ん~。蒐君、ステータス高いんだし、討伐依頼もいけるんじゃない?」
「人間相手じゃないのに、上手くいく訳ないでしょ」
僕が祖父ちゃんから習った古武術は、所詮は対人戦闘の技術だしね。モンスターには通じないだろう。
「しばらくはお使いとかで様子を見るよ。そのうちに何か使えるスキルを拾うかもしれないし。PvPのお蔭で八千Gほど手に入ったしね。……PvPとか賞金稼ぎでやってけないかな……」
「そういうのは多分、運営の非推奨プレイだからね、蒐君」
よろしければ作者の別作品「従魔のためのダンジョン、コアのためのダンジョン」もご一読下さい。