第十八章 篠ノ目学園高校(金曜日) 2.放課後
「ふ~ん? どうした風の吹き回し?」
「いや……まぁ……たまにはな……(汗)」
予想どおり匠のやつが要ちゃんの追及を受けている。いつもなら缶ジュースの一本も奢らないやつが、急に「幕戸」で奢るなんて言い出せば、疑いを招くのは当然だろう。
「匠が珍しく殊勝な事を考えたせいで、朝から雨が降ったんじゃない?」
さり気なく、朝から雨が降っていたのを、朝から奢るつもりだったという冗談にすり替えて誤魔化す。うん、匠は昼休みに失言なんてしてないよ~……と言いたいところだけど、要ちゃん、勘が良いからなぁ。
「ふ~ん? なぜ殊勝な事を考えたのかが気になるんだけど?」
柔らかに微笑む要ちゃんの視線は、しかし匠に突き刺さって離れない。「微笑みの悪魔」っていう渾名は、要ちゃんにこそ相応しいと思うんだよ。
「蒐君、何か言った?」
「ん~ん? 何も言ってないよ?」
ほら、このとおり勘が良い。
「ま、他人の好意の裏側にあるものを詮索するのも無粋だし、ありがたく御馳走になるわね」
にっこりと微笑んで要ちゃんは匠を解放した。無罪ではなく証拠不充分で釈放、ってところかな。
「そういえば蒐君、茜ちゃんに聞いたけど、プレーリーウルフは無事テイムできたのよね」
チョコレートサンデーを優雅に口に運びながら、要ちゃんが訊いてくる。
「僕がやったんじゃないけどね。従魔術師の娘が馴致に成功して、召喚術師の娘が召喚に成功したよ」
「蒐君が脅しつけて従わせたの?」
「違うよ! 何言ってんのさ、要ちゃん」
みんな、僕の事を何だと思ってんのさ。
「や~、てっきり蒐君がキョーカツしたんだと……」
茜ちゃん……
「んじゃ、蒐は何やったんだ?」
「群れの個体を少し間引いただけだよ。雑魚の相手ってとこ」
「じゃあ、従魔にしたウルフはその娘たちが自力で屈服させたの?」
「でなきゃテイムも召喚契約も成功するわけないじゃん」
「その娘たち、レベルは幾つなんだ?」
「ん~……個人情報だし、言えないかな」
「それもそうか……あ、蒐はどうやって闘ったんだ?」
「クロスボウと杖、あとはボーラかな」
「ボーラ?」
三人ともボーラを知らないみたいだから説明してやったんだけど……。
「……また、妙なものを持ち込んだな……」
「難しいの?」
「いや~? 適当に投げても結構絡み付くよ」
「そうなんだ……」
「トンの町で手に入るの?」
「ナントさんの店で買える筈だけど……そう言えばナントさん、冒険者ギルドに持ち込むとか言ってたな」
「マジか!?」
おお……匠が凄い食い付きだ……
「蒐、お前が考えてる以上に、ボーラの需要は高まると思うぞ」
そうなのかな……。あ、そうだ。
「あ、僕、明日の土曜から一泊で狛江の祖父ちゃんとこに行くんで、明日はSROできないから」
蒐一たちの通う高校は土曜は――学校行事や祝日の関係で多少の変化はあるが――隔週で休みとなっており、明日は授業の無い日に当たっていた。
「お、祖父さんのとこに行くのか」
「うん、さすがに機械は持ってけないしさぁ」
「携帯用のマシンも開発されてるみたいだけどな……やっぱ高くなりそうだわ」
「ゲームばかりやってるのは不健康だし、いいんじゃない?」
「じゃあ、月曜までお預け?」
「いや、日曜の夜には戻るつもり。何かあったら連絡するから」




