第十八章 篠ノ目学園高校(金曜日) 1.昼休み
今日は要ちゃんが図書委員会の用事で来られないという事で、三人だけの昼食になった。しかも生憎の雨模様のため屋上での昼食は中止、教室でのお弁当という事になった。
「要のやつ、自分が来れねぇもんで悔し紛れに雨降らせたんじゃねぇか」
あ~あ、匠、そんな事を言ってると……
「カナちゃんに言ってやろ~。匠君が悪口言ってたよ~、って」
「ちょっ! よせよ茜、あいつの機嫌を損ねると洒落にならねぇんだよ!」
「ん~? どうしよっかな~?」
「……判った、帰りになんか奢る……」
あ~あ、匠のやつ、後先考えずに約束してるけど……
「茜ちゃん、要ちゃんは今日一緒に帰れるの?」
「うん、帰りは大丈夫だって」
「だってさ、匠」
「……それが何だよ?」
「帰り道、茜ちゃんだけに何か奢るわけ? 要ちゃんを放ったらかしで?」
「あ……要にも奢る事になる……のか?」
「うん。で、あの要ちゃんが、珍しく匠が奢る理由を追及しないとでも?」
「あ……いや、そこは茜が……」
「茜ちゃんが約束したのは、匠の失言を黙ってる事だけだよ?」
「うん、そう」
「そ……」
「頑張ってな、匠」
あ、突っ伏した。
「それで、蒐君、プレーリーウルフは無事にテイムできたの?」
「うん。大丈夫だったよ。二人ともLv4のウルフをモノにしてた」
「「Lv4?」」
机の上に突っ伏していた匠がむくりと起きあがってきた。
「うん。斃した時にはLv5だったのに、テイムとサモンの後にレベルが下がっちゃったんだ。運営もセコいよね」
「いや、そういう仕様だから……って、最初の従魔がいきなりLv4かよ」
「飛ばしてるよね~」
「そうなの?」
「そうなの……って、最初の従魔は大抵がLv1か2だぞ? それを育てて強くしていくのが従魔術師や召喚術師の醍醐味だろう?」
「あ~……そうなんだ……悪い事しちゃったかなぁ?」
「いや、まぁ、本人たちが納得してるんなら良いんじゃねぇか?」
「う~ん……早く先の町へ行きたいような事を言ってたし、良いのかな」
そう言うと、匠と茜ちゃんの雰囲気が少し変わった。
「へぇ……従魔でブーストして、俺たち先行組を抜き去ろうってのか?」
「む~、ライバル~」
「あ、少し違うみたい。ナンの町の周りは虫とか可愛くないのばっかりだから、さっさと先に進んでモフモフを見たいって言ってた」
メイとニアから聞いた事情を説明すると、目の前の二人の闘志が急に萎んでいく。
「……そんな理由かよ」
「人それぞれだね~」
「ま、二人は二人なりにゲームを楽しむみたいだし、良いんじゃない?」
次話は金曜日投稿の予定です。




