第百八章 トンの町 19.微睡みの欠片亭(その2)
ともあれ、皮剥きによる【解体】や【掏摸】の熟練度向上は余録みたいなもので、リーチの実はシルとマハラの夕食である。二体が満足したのを見届けると、シュウイはアイテムバッグから徐に一つの品を取り出した。見ればそこそこ大きめの黒い布の袋のようだ。一体何をするつもりなのか――と見ている二体の前で、シュウイは思いきり良くその袋を被ると、
「【梟の目】発動! ……って……おぉ……ちゃんと見える……」
どうやらバランドに教わった【梟の目】訓練法を試してみたらしい。頭から袋を被って、その暗がりの中でものを見るというアレである。この袋もバランドから貰ってきたもので、光で劣化するような素材を扱う時に使う遮光性の袋であった。
シルとマハラから呆れたような視線を向けられている事には気付かず、【梟の目】の訓練に目処が立った事でご機嫌のシュウイなのであった。
その後、部屋の掃除がてら【掃除】スキルのレベルアップを図り――本末が転倒しているようだが、シュウイの認識としてはこっち――徐にステータスを表示させる。
そのステータスはどうなっているかというと、
----------
《シュウイのスキル/アーツ一覧》
レベル:種族レベル11
職業:冒険者(メイン)/遊び人(サブ)
スキル:【しゃっくり Lv3】【地味 Lv7】【迷子 Lv3】【腹話術 Lv2+】【解体 Lv10】【落とし物 Lv11】【べとべとさん Lv3】【虫の知らせ Lv10】【嗅覚強化 Lv9】【気配察知 Lv9】【土転び Lv4】【お座り Lv4】【掏摸 Lv3+】【イカサマ破り Lv6】【反復横跳び Lv4】(【日曜大工 Lv5 日用大工に進化】)【通臂 Lv1+】【腋臭 Lv1】【デュエット Lv6】【般若心経 LvMax】【弓術(基礎) Lv5】【狙撃(基礎) Lv7】【投擲 Lv6】【器用貧乏 Lv9】【飛礫 Lv6】【擬態 Lv3+】【ウェイトコントロール Lv5】【隠蔽 Lv4】【疾駆 Lv3+】(【給水 Lv3 霊水に統合】)【古道具屋 Lv3】【聴耳頭巾 Lv5+】【大食い Lv1】【闇魔法の素地(オーク) Lv3】【木登り Lv3】【霊水 Lv4】【福笑い Lv3+】【掘り出し物 Lv3+】【堆肥作り Lv3+】【ろくろ首 Lv1】【メビウスの壁 Lv3】【整理整頓 Lv3】【捕り手術 Lv3】【奪刀術EX Lv2+】【鑑定EX Lv3】【化石 Lv1】【掃除 Lv3】【伐採 Lv0】【暴走 Lv1】【左右 Lv3+】【着痩せ Lv3】【優柔不断 Lv3】【平衡感覚 Lv2】【モグラ叩き Lv3】【歌舞の心得 Lv3】【男の手料理 Lv3】【遊興術 初級 Lv1】【暴発】【ファンブル】【採集の心得 Lv3】【採掘の心得 Lv3】【野営の心得 Lv3】【日用大工 Lv1+】【ダンジョンアタックの心得 Lv0】【魔力消費低減 Lv1】【魔力察知 Lv1+】【打撃力上昇 Lv1】【耐久力上昇 Lv2】【ファイアーランス Lv1】【梟の目 Lv1】【追跡 Lv1】【利き酒 Lv0】
アーツ:(【従魔術 使役術に統合】)(【召喚術(仮免許) 使役術に統合】)【杖術(物理) 皆伝】【調薬(邪道) 初級】【錬金術(邪道) 初級】【火魔法(オーク) Lv3+】【土魔法(ホビン) Lv3】【水魔法(ホビン) Lv3】【暗器術 初級 Lv2】【聖魔法 初級 Lv1】(【死霊術(聖) Lv1 使役術に統合】)【使役術 Lv2+】
ユニークスキル:【スキルコレクター Lv7】
称号:『神に見込まれし者』『ホビンの友』『ツリーフェットの友』『霊魂の友』
『泉の精霊に祝福されし者』『泉の精霊の謝罪を受けし者』『豪気な使役主』
『ズートの友』『深淵の胃袋』『ヤマタノヲロチ』『綺麗好きの信徒』
『伝道者の祝福』『先駆けの探鉱者』『先駆けのジュエルハンター』
『先駆けのダンジョン攻略者』
従魔:シル(従魔術) マハラ(召喚術)
----------
「うんうん、予想どおりに上がってるね」
今回試用してみたスキルが何れもLv1――【耐久力上昇】はLv2――に上がっているのを見て、予定どおりとスルーしかけたシュウイであったが、
「……ちょっと待て? 【魔力察知】がLv1+? ……何で?」
「+」の添え字が付いただけとは言え、予想していたよりレベルが高くなっている。【魔力察知】は、一旦起動させるとその日一日はパッシブに働くスキルであるが、初回の【ファイアーランス】を察知した以外は、何の魔力にも反応しなかった筈。なのに、何で+の添え字が付いた?
首を傾げていたシュウイであったが、実は犯人はシルであったりする。
モンスターたちの襲撃を軽快に捌いた時、シルも当然【力場障壁】を発動させており、その際の魔力の動きに反応したというのが事の真相なのであった。
ただ……シルはシュウイやマハラの攻撃のタイミングに合わせて、瞬間的にバリアーを解除したり再展開したりしていたため、レベルの低い【魔力察知】ではシュウイに通知するのが間に合わなかった訳である。ただ、通知の暇が無かったとは言え、魔力の動きを――朧気にではあるが――察知できていたのは事実なので、それに鑑みて熟練度だけは上がっていたのであった。
シュウイも訝しみはしたようだが、まぁこんな事もあるのだろうと、諦観を交えてスルーしていた。何しろ自分が身に着けているスキルは曲者揃いなのだ。些細な事など一々気にしていられるか
まぁ、後になって真相に辿り着いたシュウイは、シルの協力を得て【魔力察知】の訓練に勤しむ事になるのであるが、それはもう少し先の事になる。
一方、シュウイの使役獣たちはと言うと――
----------
《シュウイの従魔一覧》
個体名:シル
種族:ウォーキングフォートレス(幼体)
レベル:種族レベル6+
固有スキル:【力場障壁 Lv7】
個体名:マハラ
種族:エルダーデスヘッド(幼体)
レベル:種族レベル3+
スキル:【狙撃 Lv3】
ユニークスキル:【紡糸EX Lv3】
称号:『先駆けの進化種』『パイオニア』
----------
こちらは東のフィールドのモンスター程度では、レベルアップには物足りなかったようである。




