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第百八章 トンの町 12.東のフィールド~【追跡】~(その1)

 今回拾ったスキルのうち、この場での検証が難しそうな【伐採】【(ふくろう)の目】【()(ざけ)】を除いて、大体のスキルは検証し終えた。残っているのは【追跡】である。どうやらレアスキルではないようだが、それでもそこそこには珍しいスキルであるらしく、



(たくみ)(あかね)ちゃんも(かなめ)ちゃんも、使った事が無いから知らないって言ってたしなぁ……」



 名前からして斥候職なら知っていそうである。「マックス」の斥候職であるパリス辺りに訊けば判るだろうか。(たくみ)が訊いてくれると言っていたから、その報告を待てばいい――と、気楽に考えていたシュウイであったが、



「……待てよ? SRO(ここ)の運営が、そんな安直なネーミングをするか?」



 言い掛かりのような気がしないでもないが、何しろここの運営には、【石化】と紛らわしい【化石】なるスキルを放出した前科がある。テムジンも、【選鉱】と【精錬】が紛らわしいとぼやいていたではないか。ちなみに、シュウイも持っている【擬態】と紛らわしいスキルに【偽装】があり、更にそれと紛らわしい【詐称】なる曲者スキルも存在するのであるが、そこまではシュウイの関知するところではない。



「……だとすると……まずこれが追跡(トレース)なのか追尾(ホーミング)なのかが、(そもそも)疑わしいよね……」



 前者なら、当初シュウイが予想していたとおり、足跡などを手懸かりに追跡や尾行を行なうスキルであろう。これはこれで有用なスキルには違い無い。しかし――もしも後者であるとしたら……



「……ぶっ放したファイアーボールとかが、(かわ)そうとする敵の動きを(つい)(じょう)して命中とか……凄いじゃん!」



 これは何としても有効化しなくては――と意気込むシュウイであったが……問題は、【追跡】の正体がどちらなのか判らないと、スキルアップのためのトレーニングは(もと)より使い方が判らない事にある。

 もう少し正確に言えば、スキルを解放(アンロック)する事はできるだろうが、解放したそのスキルを〝正しく〟使えるかどうかが問題なのである。

 割と有名なケースでは、【石化】と【化石】にまつわるトラブルが()く知られている。【石化】と勘違いして――もしくは頭からそう思い込んで――【化石】スキルを取得したプレイヤーが、余裕綽々(しゃくしゃく)で敵モンスターに【化石】をかけようとして失敗。自分が石と同化してして気付かれなくなったのならまだしも、敵モンスターが〝石化〟しない事に慌てて、何度もスキルを連発したりするものだから、モンスターも見逃してくれる筈が無く……結果として死に戻った後で自分の勘違いに気づき、腹立ち紛れに捨てた――というのは、今でも時折耳にする話であった。シュウイは一応説明文に目を通しており、【化石】とは自分が動かなくなるスキルらしいと知っていたが、そうでない者もいた訳だ。

 他にも【擬態】と【擬装】や【隠蔽】、或いは【選鉱】と【精錬】などがこのタイプで、使い方や使いどころを間違えて失敗した話は珍しくない。この【追跡】もそうでないと誰が言える? 追跡(トレース)追尾(ホーミング)では、これは右と左ほどにも違うではないか。



「まぁ、それは試してみればいいか」



 シュウイとしては――期待を込めて――「追尾(ホーミング)」の検証から始めたかったのであるが……これが真実〝動く的を追尾する〟というスキルであるとすれば、攻撃を避けようとする的が無くては検証できない。生憎(あいにく)と的になりそうなモンスターは、ついさっき根絶やしにしたばかりである。

 ここは次善の選択として、「追跡(トレース)」の検証を行なうしか無い。



「……そうは言っても……〝跡を()ける〟技術のスキルアップって、何をやったらいいんだろう……?」



 尾行系のスキルだとすると、「追尾(ホーミング)」同様に相手がいなくては始まらない。辺りに動くものとていない現状では、試す事すら難しいだろう。

 しかし、もしも足跡などを〝追跡する〟スキルであるのなら、現状でも何かできる事があるかもしれない。


 試してみれば判る事だとばかりに、思い切り良く【追跡】を発動させるシュウイ。そうしたところが……



「何だろう……地面の一部が淡く光ってるみたいだけど……?」



 用心しぃしぃ近寄ってみると、地表で光って見えているのは、



「……爪痕……かな? 前に祖父(じい)ちゃんの田舎で見た、イノシシの足跡に似てる……ような気がするけど……」



 (ひづめ)を持つ野生動物の中でも、シカやカモシカと違ってイノシシは副蹄が目立つため、それを以て他の動物と区別する事ができる……というのは雪上などに明瞭に残った足痕の場合で、硬い地面の上などではそこまではっきりとした足痕が残るとは限らない。

 ただし実際問題として、先ほど襲いかかって来たモンスターの中には、スラストボアなどイノシシ系のモンスターはいたが、シカ・カモシカ・ウシ・ヤギなどのモンスターはいなかった。ならばこれはイノシシ系のモンスターの足痕と考えてもいいのではないか?


 ともあれ、これでどうやら【追跡】の正体は判明した。尾行については判らないが、スキルが足痕をピックアップしたのを見ると、「追尾(ホーミング)」系ではなく「追跡(トレース)」系のスキルらしい。



「……けど……初期状態では足跡を示すだけなのか? あんまり使い勝手は良くなさそうな……え?」


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― 新着の感想 ―
[一言] 特定の足跡を意識しないと道とか足跡だらけで全部光って見える仕様? レベルを上げていくと足跡の選別がやりやすくなるとか?
[一言] 足跡に注目したら、その足跡の持ち主や、同種モンスターの現在の場所がマップにアイコンで表示され、アイコンは消さない限り現在の場所をずっとマップに表示し続けたら便利だな
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