第十六章 トンの町 2.南のフィールド(その2)
それからはプレーリーウルフの群れを見つけ次第に狩り、合間に見かけたホーンドラビットも二人が着実に狩っていった。クロスボウとボーラが大活躍だったよ。その甲斐あって、昼前には二人とも種族レベルが3に上がっていた。僕? とっくに4になってるよ。
「じゃあ、昼ご飯を食べてから、本番のテイム用の狩りって事で良い?」
「ええ。シュウイ君、色々ありがとうね」
「ありがとっ!」
「いや、それは無事テイムに成功してから言ってよ」
そうなると、プレーリーウルフならなんでもという訳にはいかないな。できるだけ強い個体がいる群れを探さないと……。
「あ、あの、シュウイ君、ほどほどでいいからね?」
あの群れは……Lv3なんて雑魚ばかりか。あ……逃げ出した。向こうは……?
「ね、ねぇ、私たちも初心者なんだし……あまり強いウルフだと失敗しちゃうかもしれないし……」
二人とも何を言ってるんだろう? Lvが3とか4なんて弱小個体をテイムしても、育てるのが大変じゃん。シルみたいな幻獣なら別だけど、ウルフなら最低でもLv5は欲しいよね。皆で囲んでボコれば大丈夫だよ。
「あ……良さそうなのがいた……Lv7か……」
「駄目!駄目!駄目!」
「却下!却下!却下!」
「え~?」
その後、Lv6のウルフも駄目出しされ、結局はLv5の個体を狙うという事で合意に落ち着いた。僕としては色々と不満があるんだけど。
「あの群れならLv5の個体が何頭かいるみたいだよ」
「でも、シュウイ君、よく野生のウルフのレベルまで判るね~」
「【鑑定】のレベルが高いのね」
うん。二人は誤解してるけど、これは【従魔術(仮免許)】と【召喚術(仮免許)】に含まれるスキルで【魔獣鑑定】というやつだ。鉱石なんかの無生物には全く効力を発揮しないけど、生き物相手だと普通の【鑑定】より詳しい情報が判る。僕は【従魔術(仮免許)】と【召喚術(仮免許)】二つを持っているせいか【魔獣鑑定W】になっている……ネットスラングのwじゃないよね? 草とか生えないよね?
「じゃ、行くよ。適当に捌いて弱らせるから、一~二発入れて身の程を思い知らせてから【テイム】してみて」
「うぅ……シュウイ君が恐い……」
「返事は?」
「「イエス、サー!」」
ノリが良いなぁ……この二人。
・・・・・・・・
いつものようにクロスボウの一撃で、遠間からLv4の個体を一頭仕留める。即座に向かって来た群れを、他の二人と共に待ち構える。先陣を切って突っ込んできた三頭はいずれもLv4以下だ。その三頭を片付けている間に、Lv5の四頭が僕たちを取り囲む。なるほど、それなりに経験豊富な群れみたいだね。
「残り四頭は全部Lv5だから、選り取り見取りだよ」
そう言ったんだけど、二人には余裕がないみたいだ。仕方ないなぁ……。
「メイ、ニア、二人で背中合わせになって死角を無くして」
「「はいっ!」」
さて、僕は少し前に出て……遊ぼうか。
ふらりと一歩踏み出した途端に、時間差を付けて二頭が襲って来た。一頭目をやり過ごして、二頭目の喉笛に杖頭を叩き込む。左右から飛びかかってきた三頭目と四頭目は、杖を手放した左の裏拳と、右手の杖で叩き飛ばす。地に落ちた三頭目の胸に飛び乗って胸骨を踏み潰す。心臓が潰れたらしく、光になって消え去る。
ダメージを受けた二頭目と四頭目は、二人が魔法で攻撃している。あのまま任せて大丈夫かな? 僕はフリーになっている一頭目を片付けようか。
ほぼ水平に構えた杖の先端をプレーリーウルフの正面に向ける。ウルフの視点からは棒の間合いが捉えにくい筈だ。SROのウルフがどの程度視覚に頼って行動しているのかは判らないけど、打てる手は打っておくのが常識だ。半身のまま、摺り足で間合いを詰める。ウルフの前脚がやや屈められる、これは……。
正面から突っ込むのを避けて跳躍し、僕の喉笛を狙ったみたいだけど、僕の方が身を低くして突っ込んでやれば、頭上に無防備な腹部♪ 戴きま~す♪
思いっ切り突き上げてやれば杖先がウルフの身体を貫通し、光になって消え去った。
「やった~っ! ニアちゃん、テイム成功したよ!」
メイがプレーリーウルフのテイムに成功したみたいだ。続いてニアがウルフを斃して……
「やったっ! 私も召喚成功!」
ニアもプレーリーウルフの召喚に無事成功したみたいだ。
「メイ、そのウルフ、怪我してるだろ? このポーションで回復させてあげなよ」
中級ポーションを渡すと怯んでいたけど……
「今は仲間の怪我を治すのが先決だろ。代金はいつか返してくれればいいから」
の一言であっさり陥落した。チョロいよ。
・・・・・・・・
「シュウイ君、今日は本当にありがとうね」
「いつかお礼するからっ!」
「いや……いいけどさ……そのウルフたち、衰弱してない?」
Lv5だった筈なのに、二頭とも何回見直してもLv4なんだよな。
「あぁ、テイムやサモンで従魔化したら、レベルが一つ下がるのよ」
「あたしたちには丁度良いレベル!」
「え~……知ってたらワンランク高いのを狙ったのに……」
「「だから、黙っていた」の!」
二人とも欲がないなぁ……。
メイがウルフを従魔化したので、冒険者ギルドで従魔登録をしなきゃいけないらしく、ニアもそれに付き合うらしい。……従魔登録って、何?
「公式ガイドにも載ってるけど、従魔を得た場合、ギルドで登録しなきゃ駄目なのよ。召喚獣の場合はその必要は無いけど」
「あ、従魔を得た場所のギルドで登録しないと駄目なんだ?」
僕はシルの事登録してないけど……拙いのかな?
「そういう訳じゃないけど、間違って傷つけられたり、揉め事に巻き込まれると色々面倒だから、大抵は現地で登録するみたい」
ふ~ん。なら、セーフかな。
「シュウイ君はどうするの?」
「折角だから、もう少し狩りをしてみるよ」
「そう、じゃあ、今日はここでお別れね」
「またいつかっ!」
「うん、それじゃあ」
僕たちはパーティを解除して別れた。




