第百六章 その頃の彼ら 6.「モフモフの旗(フラッフィ・フラッグ)」
少し短いです。
一方その頃、アルファンの宿場町の一角では、同じメッセージを聞いた二人の少女が相談していた。一人はピンクの髪を短めのツインテールに纏めた小柄な少女で、少し勝ち気そうな顔付きをしている。もう一人は青い髪を腰まで伸ばした利発そうな女の子で、こちらは先の少女よりも少し背が高い。
二人でパーティ「モフモフの旗」を組んでいる、従魔術師のメイと召喚術師のニアの、使役術師コンビであった。
「……どうしよっか?」
「ダンジョンの事? 女の子二人だけでどうしろって言うの? とりあえず静観するしか無いでしょう」
「うん……そうだよね」
髪の長い少女に窘められて、少し残念そうなツインテールの少女であったが、
「メイちゃん、残念なのは解らなくもないけど、あたしたち二人だけでダンジョンは無理よ。ハックもジャックも、どちらかと言うと広い場所での戦いが得意なんだし」
二人が従えているのはプレイリーウルフ。確かに、狭苦しいダンジョンの中ではその持ち味が活かせなさそうな気がする。
「それに――能く考えてみて? 何となくだけど、ダンジョンにモフモフって出ないような気がしない?」
「うん! ダンジョンは止めよう!」
実に好い顔で朗らか高らかに宣言するメイ。
パーティ名からも察せられるように、二人は重度のモフモフ亡者である。二人がこのゲームを始めたのも、全ては心置き無くモフモフと接せんがため! モフモフの出ないダンジョンになど、何の魅力があると言うのだ!
「それでなくてもこの子もいるし……ダンジョンは無しね」
そう言ったニアの足下には、コロコロとした感じの子犬が一匹。……いや、どこからどう見ても子犬に見えるが、実はプレイリーウルフの子供である。そのムクムクな毛足の長さから、ムックなどという名前を頂戴しているが。
「さすがにこの子をダンジョンになんか連れて行けないわよ」
「あ~……やっぱり危ないよね?」
メイとしては自分たちで守れば何とかなるのでは――とも考えていたようだが、
「危ない以前に……ちょっと目を離したらこの子、どこへ潜り込むか解らないわよ?」
「あ~……好奇心強いもんね、この子」
好奇心の強い子犬が、ダンジョンの中で迷子になる?
そしてそんな子犬を探して、一寸先も定かでないダンジョンの中を歩き廻る?
ただでさえ危険なダンジョンなのに……
「難度が一気に跳ね上がりそうな予感しかしないよ?」
「だよね……」
――斯くして、メイとニアの使役術師パーティ「モフモフの旗」は、少なくとも当分の間はダンジョン攻略に不参加という方針が決定されたのであった。




