第百六章 その頃の彼ら 4.「マックス」(その2)
アルファンの宿場町の南西にあるリャンメンの村は、追捕クエストの完遂によって、「マックス」の手で開放された場所である。ただし、山裾にある小さな小さな村なので、訪れるプレイヤーはほとんどいない。アルファンの宿場町で訊けば問題無く判るのだろうが、そこまでするプレイヤーがいないとみえる。
「あまり特殊な場所だと、不公平だとか言い出すやつが出てきそうだが……リャンメンはその点どうなんだ?」
「さぁて……一応秘密ではないし、アルファンの宿場町で訊けば判る筈だぞ?」
「場所を訊くという事自体、村の存在を知っていなければできない――とかは?」
「……あり得るな……」
そう考えると、リャンメンの村付近にダンジョンがあるという線は見込み薄か? あの強かな運営が、後々非難されるようなヘマをするとは思えない。
「いや……それに関しては少し気になる事があるんだが……以前にリャンメンの村の近くに、〝何かがあるんじゃないか〟――って話したのを憶えてるか?」
「おぅ。そこからヴォークの実を探り出して……おぃ、まさか……」
「あぁ。ヴォークの実ではなくて、ダンジョンだった可能性もあるんじゃないか?」
マギルの指摘に一同が再び考え込むが、
「……いや……あの時、繋ぎ役の男が口にしたのはヴォークの実の事だった。明かされる情報はヴォークの実で間違い無いんじゃねぇか」
「……考え過ぎだったか?」
「いや、しかし……リャンメンの村で何か情報が得られるというのはありだろう」
「だな。リャンメンの村以外にも情報提供のルートを作ってさえおけば、情報の独占という非難には当たらん訳だ」
皆がこの筋は有望かと思い始めた時、ポツリとタクマが呟いた。
「情報源……SROって、NPCからの情報入手を推奨してるよな?」
タクマの脳裏に浮かぶのは、トンの町の住人だけでなく、ホビンやらツリーフェットなどという非人類系のNPCからも色々なネタを仕入れてくる、とある知人の事であるのは言うまでも無い。
そして――タクマが何を思ってそう呟いたのかぐらいは、パーティメンバーにだって判るというものだ。
「……コボルトの子供か」
「空き家の事を教えてくれた、猫の幽霊とかもいたよな?」
「ギルドの職員にも伝手ができたしな」
どの情報提供者も、一見さんには捕まらなさそうな者ばかりである。情報の独占は可能だろう。
少し気になる事と言えば、「マックス」の面々がコネを作った相手が、コボルトの村ではなくてコボルトの子供一人であった事だろうか。情報の内容に制限がかかる可能性はあるが、だとしても得難い情報源には違い無い。
「これは……行くしか無いよな?」
「だな。ここまでお膳立てされてる以上、無視するという手は無い」
「他のやつらはゴッタ沼に押し掛けてるみたいだけどな」
「プレイヤーでごった返してるって話だぞ?」
「ゴッタ沼だけに」
サントの突っ込みに少し鼻白んだ一同であったが、
「それは措いといて……SROの運営が、そんな判り易い場所にダンジョンを作るか?」
「だよなぁ」
実は――ゴッタ沼の近傍には、知られざる洞窟が存在する。沼全体を覆う瘴気に隠されて気付かれていないという設定であるのだが……その事が明らかになるには、今少しの時間を待たねばならないのであった。
「ぼくたちのマヨヒガ」、本日21時頃更新の予定です。宜しければこちらもご笑覧下さい。




