第百四章 成り行きダンジョンアタック 23.運営管理室
「……あっさり風味で終わったな」
「ラストチュートリアルが一番短かったんじゃないのか?」
諦観を声に滲ませながらも脱力した口調で会話しているのは、既にお馴染み運営管理室の面々である。
「元凶はあのスキルだろう。【奪刀術EX】」
「武器持ちには悪夢のようなスキルだよな……」
「AIも何でまたあんなスキルを認めたんだか……」
「だが、スキルにしようとしまいと、彼は同じ事をやらかしただろう。寧ろスキル扱いにしておかないと、チートだの何だのと騒がれるぞ?」
「そうなんだよなぁ……」
管理AIの英断は認めざるを得ないが、自分たちが知恵を絞った難題を、あんな裏技紛いの方法でクリアーされるというのも……
「……そう言や、何でAIはあんなチュートリアルを出題したんだ?」
抑、あの【奪刀術EX】を認知したのはAIである。こういう結果は容易に予想できた筈だ。
「知らなかったのか? チュートリアルダンジョンのチュートリアル内容は、事前にプリセットされたものがランダムで選ばれるんだ。既にセットされた後であのプレイヤーがダンジョンを見つけ出したんなら、内容を変更する余地は無かっただろう。抑そういう事は想定してなかったからな」
「そういう訳か……」
「しかし……『遊び人』の効果なのか『神に見込まれし者』の効果なのか知らんが、彼もまた能くあんなチュートリアルセットを引いたもんだ」
「難度の高いチュートリアルだったんだよな?」
「最高難度……の、筈だった。……一応は、な」
基本的にチュートリアルダンジョンの方が正規のダンジョンよりも――飽くまで〝チュートリアル〟なので――楽に設定してある。まぁ、その反面で――やっぱり〝チュートリアル〟なので――モンスターやトラップのバリエーションは非常に豊富になっている。ついでにダンジョン内での採集や採掘ポイントも豊富になっているので、苦楽相殺する仕様にはなっているのだが。
ところが、前にも述べたようにシュウイが引き当てたチュートリアルダンジョンは、この時最高難度のチュートリアルパターンがセットされていた。その意味では新人たち――特にそのうち二名――の嘆きも故無きものではなかったのである。
「何しろ、ただボスを斃すだけじゃなく、得物を奪い取るのをクリアー条件にしてたからな」
「単に斃しただけだとボスは得物を持ったまま光に還り、ミッションは失敗扱いになった訳だ。挑戦者の怒号が渦巻く事必至……だった筈なんだよなぁ……」
最難関だった筈のチュートリアルを、【奪刀術EX】という裏技で秒殺された訳であるから、スタッフたちが納得いかないという表情を浮かべるのも宜なるかなである。
「問題はだな、あの【奪刀術EX】とは違い、【掏摸】はレアではあるがユニークではない――という事だろう」
「……同じようにして突破される可能性があると言うのか?」
「無いとは言えんだろう。斥候系の職なら、【掏摸】はそれなりに使い処のあるスキルだ。【掏摸】持ちがこのチュートリアルに当たる……と言うか、同様の局面に当たる可能性は小さくない」
「斥候職なら、それなりに体術のスキルも持っていそうだしな……」
「……幸か不幸か、まだ問題になりそうなモンスターは登場させていないよな?」
「難易度調整の見直しか?」
「もしくはクリアー条件の見直し……これって運営管理室の職掌じゃないよな?」
「あぁ、どちらかと言えば開発部の担当だろう」
面倒を背負い込むのは自分たちではないと気付いたスタッフたちの声と表情が、俄に明るいものとなる。
「なぜあんな疫病神を生み出したんだ――って、言われそうな気はしますけどね……」




