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第百四章 成り行きダンジョンアタック 16.チュートリアル~ラストステージ~(その3)

「師匠~……も、無理です……」

「先頭、代わって下さい……」



 うち続くモンスターとの戦闘で神経と気力体力を磨り減らした新弟子二人が、息も絶え絶えに先鋒の交代を訴えている。何を惰弱な……と鬼軍曹たちから却下されそうな嘆願であったが、この場合はそうとばかりも言えない現実があった。何しろ、ここまでモンスターの攻撃は、ほぼ新弟子二人に集中しているのである。

 とは言っても、別に二人がモンスターの恨みを買っている訳ではない。ごく単純な、しかも筋の通った理由によるものであった。


 まず、主戦力たるシュウイとテムジンが手強いのは、ダンジョンにもモンスターにも判っている。なら、敢えて強力な相手にぶち当たる必然性は何も無い。戦線の弱いところを()くのは兵法の鉄則である。

 だが、〝弱い〟というなら他の三名はどうなのか……と言いたくなるが、生憎(あいにく)とこの三名は(おん)(ぎょう)系スキルの達者であり、姿を隠しているために狙われにくい。

 ()くの如き消去法の結果、ダンジョンモンスターの攻撃が新弟子二人に集中するという結果を招いているのである。


 最初のうちは〝チュートリアルだから丁度好い〟などと(うそぶ)いていた鬼教官二人であったが、さすがにここまで消耗が酷いとなると、考えも変わってくるというものだ。ヘロヘロになった二人が何かミスをしでかして、全員が危険に(さら)されるようでは、これは本末転倒ではないか。

 


「……事ここに至っては()むを得んな。……シュウイ君、悪いが……」

「えぇ、代わります」



 戦闘力という点ではテムジンもシュウイに引けは取らないが、警戒能力という点では、四つのスキルを重ね掛けしているシュウイに軍配が上がる。

 それに加えて、目下のテムジンの主武装は弓である。前衛よりも後衛に陣取った方が都合が好い。対してシュウイの主武器は――少なくとも現在携えているのは――杖であり、遠~中距離戦よりも近接戦闘に向いている。


 こういった理由でシュウイが先鋒を務めようとしたのであるが……



「あの……良かったら僕にやらせてもらえませんか?」

「「「「――え?」」」」



 名告(なの)り出たのは意外な事にモックであった。彼の目指す職業は「吟遊詩人(バード)」。いずれ職業レベルが上がって呪歌のスキルでも得てからならともかく、今は先鋒など務まるステータスではない筈だ。(そもそも)呪歌のスキルにしたところで、近接戦向けのスキルではない。



「いえ、確かに戦闘には向きませんし、僕もそんなつもりはありませんけど――偵察だけなら何とかなりそうな気がして」



 ――そう言われて、シュウイとテムジンは顔を見合わせる事になった。


 確かにモック――とエンジュ――は、逃げ隠れ最優先というシュウイの指導によって、【警戒】と【隠蔽】は著しい成長を見せている。これに加えて【平衡感覚】も育てているため、足場の悪いダンジョン内でも安定して進む事ができる。それらを考えると……



「……(むし)ろ、偵察要員には打って付けか?」



 その意味では、自分のところの新弟子二人より有能かもしれんというテムジンの評価に、首を(かし)げつつも同意するシュウイ。内心ではまだ懸念があったのだが、



「最悪の場合は【咆吼】を使いますから」



 ――というモックの発言を聞いて(はら)(くく)る。



「……そう言えば……取得してたね、そういうスキル……」



 (かつ)てモンスターの猛攻を前にして発声練習をさせられた結果、想定外にも拾う事になったスキルである。この際だから使えるのなら使っておいて、スキルの成長を図るのも悪くはないだろう。発声に関するスキルに違いは無いのだし、育てておけば「吟遊詩人(バード)」への転職にも有利かもしれない。



「じゃ、お願いしようかな。けど、無理はしないようにね」

「はい!」



 ――()くしてチュートリアルとは言え、ダンジョン攻略の先鋒を「吟遊詩人(バード)」(志望)が務めるという、あまり例を見ない展開になったのであった。

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― 新着の感想 ―
[一言] 第二十四章 トンの町 2.東のフィールド~落とし物~では、崖を降りたところにかつての盗賊の隠れ家在って、臨時収入あったし、 ああいう感じに3Dゲームの隠れ方してる場所は、 VRダンジョンだと…
[一言] VRなのに、2Dゲーム思考の階段や落とし穴しか上下移動無いダンジョンじゃなく、3Dゲームの要素もほしい 3DゲームはRPGだって、アイテムや隠れキャラや仕掛けなどは、上下移動しないと行けない…
[一言] 音を出すも出さぬも自由自在。 それが吟遊詩人の本当の力。
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