第百四章 成り行きダンジョンアタック 14.チュートリアル~ラストステージ~(その1
モンスター・トラップ・採集採掘と、一とおりのチュートリアルは済ませたような気がする。これにてチュートリアルは終了だろうか。
「そうなんですか?」
「あとはまぁ、マッピングとかもあるんだが……そこまでいくと専門のスキルを持ってないと難しいしな。夜営とかはダンジョンの中でも外でもあまり変わらんし……強いて挙げるならボス部屋とかモンスターハウスだろうが……初心者向けのチュートリアルでそこまでやるかどうか」
「あぁ、成る程」
テムジンの疑念に答えるかのように、
《ラストステージは実践になります。これまで学習してきた知識と技術を駆使してクリアーして下さい》
――というメッセージが表示されたかと思うと、シュウイたち一行は別の場所へと転送されていた。
「……思っていた以上に確りした訓練過程のようだな。実戦までキッチリと教えてくれるつもりらしい。親切な事だ」
「親切?」
「あぁ、訓練で死にかけた分だけ、実戦では生き残る確率が高まるだろう?」
「成る程……」
専門家としての含蓄のある発言に、さすが本職の視点は違うと感心する事頻りのシュウイであったが、脇で聞いている新弟子たちは感心するどころではない。それはつまり、これまでよりもっと苛酷な特訓が待ち構えているという事ではないのか?
「あ、だったら態々別の場所に飛ばされたのも?」
「それだけ面倒なステージを用意してあるという事だろう。何しろ実戦だからな」
〝じっせん〟のイントネーションが「実践」とは異なっているような気がして、不安に駆られる新人たち。
そして、そういう不安を歯牙にもかけず、前進を宣告する鬼教官二人。
「……あ、あの……師匠……」
「お話を聞いていると、今までより難度が上がるような事を仰ってましたが……?」
「? それがどうかしたか?」
「だ、だから難度がアップするのに――」
「俺たちが先頭なのは変わらないんですか!?」
半ば悲鳴のような声を上げて、先頭交代を嘆願する新弟子たちであったが、
「それじゃチュートリアルにならないじゃん?」
「鍛冶仕事ばかりで剣が夜泣きすると言ってなかったか? 丁度好い機会だろう」
「「そんなぁ……(泣)」」
後から鬼教官二人に蹴り飛ばされるような格好で、泣く泣く先鋒を務め続ける新弟子たちなのであった。
・・・・・・・・
「――お? ちょい待ち、トラップがある」
油断無く【看破】を使って前方を警戒していた$p①Gがトラップの存在に気づき、後続に身振りで停止の合図を送る。ちなみにMP消費を抑えるため、【看破】は二人で交互に使っている。
「迂回するか? 解除できそうか?」
「……避けて通るには窮屈な位置取りだ。見た感じじゃ解除できなくもなさそうだし……やってみるか。警戒頼む」
「オッケー」
$p①Gがトラップの解除作業に専念する間、代わって周辺の警戒を任された・払であったが、
「おい、ちょっとここ押さえててくれ」
「……俺は警戒担当なんだが?」
「そっちは誰かに代わってもらえ。俺一人じゃどうにもならねぇんだよ」
「……しゃあねぇな。解った」
警戒をエンジュとモックに任せ、$p①Gを手伝おうと・払が屈み込んだその時、
「――敵襲!」
「気をつけて! モンスターの奇襲です!」
――モックとエンジュの警告が響いた。




