第百四章 成り行きダンジョンアタック 13.チュートリアル~サードステージ~(その4
「「「「「「ミミック!?」」」」」」
「成る程。トラップのチュートリアルにミミックが出ないと思っていたが……ここで投入してきた訳か」
「宝箱」を見た時点でこの展開を予想していたらしいテムジンは落ち着いているが、他の新人たちはそうではない。シュウイの警告が無ければ、自分たちがミミックに襲われていたのは間違い無いのだ。
そしてそのシュウイであるが……不意を衝く事に失敗したミミックごときに手を焼く筈も無く、あっさりとその討伐に成功するのであった。
(【虫の知らせ】が警告してくれなかったらヤバかったけどね)
重ねがけしていた警戒スキルが功を奏して違和感を覚え、【イカサマ破り】と【鑑定EX】でその正体を見破ったらしい。その後は単なるルーチンワークでしかない。
本物の宝箱でなかったのは残念だが、
「なに、確か経験値がそれなりにある上に、ミミック自体のドロップ品もあった筈だ」
「ドロップ品ですか?」
「あぁ。βテストでは、これまでに捕食した冒険者の遺品を落とす――という設定になっていた」
ちなみにβテストでは、本物の宝箱の中身は、参加メンバーにランダムで振り分けられる仕様になっていたという。
単一のパーティなら然して問題は無いのだが、複数のパーティが参加していた場合や、ソロのメンバーが臨時に混じっていたりした場合は、下手をすると不和の種を蒔く事になりかねないので、配分については後で協議するのが慣例らしい。
なお、βテストの時には、使役獣までランダム振り分けの対象になっていたそうだが、
「さすがにこれは改められたようだ」
「使役職が優遇され過ぎですもんね」
「それもあるが……【魅了】の効果が付いたティアラが、スライムに振り分けられた事があったらしい」
「うわぁ……ゾンビとかでなくて、良かったですね……」
一部では、面白いからこのままで――という声もあったようだが、さすがにこれはアレではないかという意見が大勢を占めたため、見直す事になったという。
――と、シュウイとテムジンがそんな脱力ものの会話を交わしているその後ろでは、
「……なぁ……ミミックはともかく宝箱って、【採掘】で見つかるもんなのか?」
「いや……あれは宝箱を発見したんじゃなくて、隠し部屋を発見したって事だろ?」
「確か【採掘】の対象には、遺跡とかも含まれていましたよね」
「それって、『トレジャーハンター』とか『ルーインダイバー』の仕事なんじゃ……」
「あ、どちらも【採掘】は不可欠みたいですよ?」
「そうは言っても……俺らみたいな鍛冶職が普通に育てた【採掘】だと、隠し部屋なんか見つけられないよなぁ……」
「まっさらの【採掘】でも見つけられなかったし……シュウイさん、何のスキルで見つけたんだ?」
「マナー違反なのは承知してるが……気になるよなぁ」
「シュウイ先輩は……色々と規格外な人ですから……」
「スキルのレベルもあるだろうけど、普通の【採掘】だけだと、隠し部屋を見つけるのは難しそうな気がしないか?」
「……ここは寧ろ、【看破】の出番じゃないのか?」
「ダンジョン情報の解禁と同時に一般解放されましたからねぇ……」
「斥候職とかは間違いなく取るだろうし」
「ダンジョンでは斥候職が活躍する事になりそうだな」
――などという会話が交わされていたのであった。




