第百四章 成り行きダンジョンアタック 7.チュートリアル~セカンドステージ~(その2)
「テムジンさん、こういうダンジョンのトラップって、どういうものなんですか?」
――などと、今更な質問をのほほんとした顔で向けてきたのはシュウイである。
「運営管理室の悪夢」としてのセンスと能力を遺憾無く発揮してはいるが、この手のVRMMOには詳しくない。畢竟、トラップの事もあまり詳しくないのであった。
時間さえあれば学校で、有能な幼馴染みたちから情報を仕入れるのだが、今まさにトラップの講習を受けているという状況では無理な話。この場で質問するとしたら、その相手はβテスターの経験を持つテムジンしかいないだろう。
「自分もSROのダンジョンは初めてだから、他のゲームからの類推になるが?」
「あ、はい。勿論それで構いません」
そんなシュウイに一言断りを入れておいて、テムジンは代表的なダンジョントラップの例を挙げる。落とし穴・吊り天井・仕掛け矢・槍衾・流砂・転移陣・警報トラップ・毒ガス・転がる大岩・ミミック……
「……結構色々あるんですね……」
「まぁ、某映画に出てくるようなものは、大体揃ってると考えてくれ」
バラエティ豊かなトラップが目白押しに出てくる展開を想像して、シュウイは憂鬱になっていたが、プレイヤーとしての経験豊かなテムジンによると、
「いや、そこまで酷いダンジョンは滅多に無いな。出てくるとしても中盤以降。それも、かなり特殊なダンジョンになる筈だ」
こんな序盤の、それも最初の町の近くに出現するとは思えないと言うのだが、
「けど師匠、テキはSROの運営ですよ? そんな当たり前のダンジョンを用意しますか?」
「そうそう。トラップだって、捻りに捻ったものを出してくるとか」
――と、これに異を唱えたのが新弟子たちである。第二陣プレイヤーである彼らにも、SROの運営の鬼畜っぷりは知れ渡っているらしい。
これに対して、
「いや……確かにここの運営は鬼畜だが、仮にもチュートリアルと銘打っている以上、あまりおかしなものは出せない筈だ」
――と、テムジンは運営側の視点から再反論する。SROの運営が鬼畜な事は間違い無いが、鬼畜は鬼畜なりに筋を通している。虚偽のある説明を言い立てて、プレイヤーに突っ込まれるようなヘマをする筈が無い……というのがテムジンの言い分であり、
「……それはあるか……」
「運営のやつら、俺たちの見過ごしや失敗を、裏で嗤っていそうな気がするしな……」
新弟子たちもこれには同意せざるを得ないのであった。
これで話が決着すれば、然したる問題は無かったのであるが――
「チュートリアルダンジョンっていうのは、普通のダンジョンと違うんですか?」
何の気無しに発したシュウイの問いかけが、その場の面々を考え込ませる事になった。
「……単にチュートリアル用のダンジョンだと思っていたが……」
「これも運営の罠ですかね?」
論より証拠、確かめるに如くは無いだろうという事になり、問題のメッセージウィンドウを再表示させる。
説明文中の「チュートリアルダンジョン」という語を凝視すると、それに関する説明がポップアップで表示された。
「……運営め、凝った真似をしてくれる……」
「え~と、何々……?」




