第百四章 成り行きダンジョンアタック 5.チュートリアル~ファーストステージ~(その2)
安全な後方にいたのが一転して、ダンジョンアタックの最前線に押しやられる事になった・払と$p①Gであったが……
「え……? 外での戦闘経験もまだ充分じゃないのに……」
「いきなりダンジョンアタックっすか?」
少し前まではモンスター狩りだと意気込んでいたのに、昨日のシュウイの無双っぷりを目にして、すっかり自信を失ったらしい。
「いや……アレを目指せとまでは言わないから……」
初心者の目標とするには、「微笑みの悪魔」や「惨劇の貴公子」はハードルが高過ぎるだろう。……SRO内では、「流血天使」とか「朱の君」とか「鮮血のプリンス」とかの二つ名もあるようだが……初心者のお手本とするのに相応しくないのは同じである。
「抑、俺ら【警戒】スキルはあんまし鍛えてませんし」
「自慢になるか。好い機会だからここで鍛えろ」
「そこはウチの新人たちがバックアップしますから。……戦闘向きでない分、それくらいの役には立たなきゃね?」
後半はモックとエンジュに向けての発言であるが、その二人にしても異存は無いようで頷いている。
それに加えて、その後には更に高いスペックを誇るシュウイとテムジンが控えているのだ。奇襲を受ける心配など皆無である。……まぁ、練習代わりにあえて奇襲を受けさせる事が、全く無いとは言わないが。
「いいからさっさと先頭に行け」
「「うへぇ~い」」
・・・・・・・・
その後はサクサク……とまでは言わないが、それなりに良いペースでダンジョンを進む。新人たちの経験値も随分と貯まったようだ。
「しかし……ゴブリンに慣れたところでヤマネコですか」
「【鑑定】ではセイバーリンクスとなっていたな。剣歯虎の小型版という事らしい」
「待ち伏せに特化したモンスターみたいでしたね。高みに伏せていきなり襲いかかって来ましたし」
「どうやら【隠蔽】スキルも持っていたようだな。シュウイ君のところの新人たちも、気付くのが遅れていた」
テムジンの指摘に、申し訳無さそうに黙って俯くモックとエンジュ。却ってテムジンの方が慌てている。
「あ――いや、咎めるつもりは無かったんだが……それに、直前に気付いていたし」
陳弁にこれ努めるテムジンをフォローするかのように、テムジン工房の新人二人が後を続ける。
「そうそう。俺らなんてまるで気付いてなかったんだし」
「どっちかって言うと、気付いていながら黙ってた誰かさんの方が罪深いよな?」
ジト目の二人の当て擦りにも、ベテラン二人は素知らぬ顔である。だってこれは訓練なんだし。
ちなみに、奇襲を仕掛けてきたセイバーリンクスの【隠蔽】スキルであるが、目出度くシュウイの【隠蔽】スキルのレベルアップに寄与していた。どういう事かと言うと、これもまた【スキルコレクター】の効能である。
これまでにも折に触れて述べてきたように、【スキルコレクター】には只管にスキルの蒐集に邁進する性質がある。
斃した敵が持つスキルもその例外ではなく、低確率でスキルを奪う仕様になっている。確率が低いのは、ただでさえバランスブレイカーな「スキルコレクター」――この場合はスキルの保有者を指す――が強くなり過ぎないための調整なのであったが……ここで問題になったのが、シュウイの持つ「神に見込まれし者」称号であった。
この称号はイベント期間中に称号保持者の幸運値を上げるという効果があるのだが、現状でシュウイは複数のイベントを遂行中であり、幸運値底上げの効果にも累積が発生していた。底上げされた幸運値の影響で、【スキルコレクター】がスキルを得る確率も上昇しており、結果としてセイバーリンクスの【隠蔽】スキルもシュウイの手に収まり、スキルレベルを上げるという結果になったのであった。
ただまぁ、この時のシュウイはそんな裏事情に気付く事も無く、
「意外にコウモリが出て来ませんね?」
「あれは空中から音も無く襲って来るからな。慣れないと対処が難しい。その上にドロップ品に旨味が無いから、チュートリアル向きではないと判断されたのじゃないかな」
「あぁ、成る程」
――などという会話をのんびりテムジンと交わしていたのであった。
新作「ぼくたちのマヨヒガ」、本日21時に投稿の予定です。今回は少し趣向を変えて、ローファンタジーものになります……一応。宜しければご笑覧下さい。




