第百三章 裏表探石行 13.夜営(その2)
それから後は、特に語る事は多くない。
不発に終わった【伐採】スキルの代わりに、【男の手料理】スキルが大活躍したくらいである。よもやそんなスキルがあるとは想像もしていなかった一同、寧ろ通常の【調理】スキルより野営に向いていると評価し、羨ましがる事頻りであった。
夕食時にシルとマハラの――召喚獣という設定での――お披露目があり、驚かれはしたものの、深くは追及されずに終わる。尤もエンジュとモックの二人は、付き合いが長い分だけ、何か裏があるらしいと察しを付けていたようであったが。
寧ろ話題の中心となったのは、昼間の採掘の結果であったが、メンバーのジョブ構成に鑑みても、これは当然の成り行きであろう。
「へぇ……だったらみんな、【採掘】がレベルアップしたんだね」
「僕は【採掘】を持ってませんけど、代わりに【警戒】がレベルアップしました」
「うんうん。みんなが採掘してる間、モックは警戒役を頑張ってくれてたからね」
――という者がいる一方で、
「あたしは変化無しですね。植物は何種類か採集したんですけど……」
――瑞葉のレベルは上がらなかったようだ。……と言うか、栽培農家を目指す彼女は、ここまでの行動でレベルアップするようなスキルを持っていない――というのが正しいのだが。【採集の心得】と【樹医の心得】一応は持っているものの、植物採集系のスキルは持っていないため、レベルアップの恩恵は無かったようだ。
「スキルは幾つか拾ったんですけど……それが役に立たないスキルばかりで……」
「そうなんだ……」
「まぁ、SROだとそういう事も多いからなぁ」
――などと同情している一同であるが、実は彼女の言う〝役に立たないスキル〟の内容というのが、世間の認識とは大きくかけ離れている事には――シュウイも含めて――気付いていない。
瑞葉にとって〝役に立つ〟スキルとは、植物の栽培などに関するスキルを指すのであって、それ以外のスキルは押し並べて〝役立たず〟である。……仮令それが、【魔力消費低減】【打撃力上昇】【耐久力上昇】【魔力察知】【梟の目】【ファイアーランス】などというスキルであったとしても。
実は瑞葉の幸運値(LUC)はそこそこ高い。それというのも、農家としてやっていくつもりだった瑞葉はどのステータス値を上げたらいいのかが解らず、下手に攻撃力(STR)や防御力(DEF)を高めておくと「冒険」に引っ張り込まれる――他ならぬテムジンがその憂き目に遭っている――のではないかと恐れた結果、とりあえず無難そうな幸運値(LUC)に振ったという事情があったのだ。
なのでその幸運値によって、有用な――註.一般的評価――スキルを拾いまくっているのだが……それらの一切が無価値と断ぜられて捨てられるという、或る意味で噴飯物の事態になっていたのである。
瑞葉以外だと、テムジンは【錬金術】がレベルアップしていたそうだ。シュウイも【錬金術】は持っているが、彼の【錬金術(邪道)】はレベルアップの条件が違うようだし、そっちの期待はできないだろう。
ちなみに、シュウイはここまでステータスの確認は控えている。大っぴらにできない事が多過ぎるため、ステータスチェックの様子を見られるのすら願い下げにしたい――というのが本音である。なのでステータスの確認には参加せず、辺りの警戒に腐心しているような振りをしていた。……いや、実際に警戒はしているのだが。
だが、そろそろ自分のステータスにもお鉢が廻って来そうだと感じたシュウイは、先手を打つ事にした。
具体的には【遊興術】の事をカミングアウトした上で、試してみたいので協力してくれと申し出たのである。この策略は吉と出て、和気靄々の雰囲気の中で、シュウイは追及を有耶無耶にする事に成功したのであった。




