第百三章 裏表探石行 8.禁断の反応式:「スキルコレクター」+「遊び人」
シュウイの肩に陣取るマハラが【紡糸】と【狙撃】で目潰しを放ち、懐のシルがモンスターの目前に小さな【力場障壁】を出現させてモンスターを殴り飛ばしているのも大概な話であるが、それ以上に問題なのは……シュウイの意図していないところでレアスキルが勝手に発動して、モンスターを翻弄しているという事であろう。それが「問題」の体を成していないのは、動きの乱れたモンスターをシュウイが条件反射的に討ち取っているからに他ならない。
そして……最初こそ戸惑ったものの、シュウイにはこの変事を引き起こしたものの見当が付いていた。戦闘の直前にジョブチェンジした「遊び人」、その【暴発】スキル以外に無いではないか。
(意図していないタイミングでスキルが発動し、それが結局は有利に働く――って、どういう事かと思っていたけど……こういう意味かぁ……)
――と、独り納得し感心しているシュウイであるが……違う。
抑まともな戦闘スキルを使う事のできない「遊び人」は、本来であれば前衛になど立つ事の無い後衛的なジョブである。戦闘向けでないスキルで身を守るために、【暴発】という形でスキルの発動補佐を行なう訳だが……これは実は、言ってしまえば戦闘補助用の人工頭脳のようなものであった。
手持ちの非戦闘スキルを遣り繰りして身を守るのが本来の形なのであるが……歌枕流を身に着けたシュウイは、当たり前のように前衛に立つのが日常である。そんなシュウイを守るべく「遊び人」も奮闘せざるを得ないのであるが……幸か不幸か「スキルコレクター」であるシュウイは、戦闘にも使えるレアスキルを山ほど所持していた。
なけなしのスキルを遣り繰りして主人の身を守るべく設計されている【暴発】スキルに、戦闘にも使えるスキルを山ほど与えたらどうなるか……目の前のはっちゃけぶりがその答であった。
主に使う――【暴発】させる――スキルは【お座り】・【土転び】・【左右】であったが、それ以外にも瞬間的に【擬態】と【隠蔽】を発動させてモンスターの視覚を欺くわ、【火魔法(オーク)】の弾幕射撃で不意を衝くわ、その弾幕射撃が【ファンブル】のせいでジャムったかと思えば、弾詰まりを起こしていたファイアーボールが一纏めにされて巨大な火球となって打ち出され、オークを一撃で焼き尽くすわ、果ては有効化したばかりの【モグラ叩き】で足止めがてらに大ダメージを与えるわ……スキルの持ち主にしてみれば、レアスキルの使い方のお手本を見せられているようなものである。あぁ、「遊び人」とは斯くも有用なジョブであったのか。
驚嘆の思いのシュウイであったが……大事なことなので繰り返して言うが、これは本来の「遊び人」のあり方ではない。それが証拠に楽屋裏では……
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「――おぃっ! どういう事だ!?」
モニターを前にして目を剥いているのは運営管理室の面々。もはやお馴染みとなった光景である。
「スキルが勝手に発動して……【暴発】か!?」
「た、確かにあのスキルは、戦闘スキルを得る事のできない『遊び人』の自衛補助という一面があるが……」
「最適なタイミングで最適なスキルが、次々と発動しているな……」
「また、使える手札が多いんだ、彼は」
「幸運値が高いのも何気に影響していそうだな……」
そうは言ってもシュウイは、一発で相手を行動不能にするような〝戦闘系の〟スキルは持っていない。しかし、それを補って余りある、歌枕流のパーソナルスキルを身に着けている。一瞬でも動けなくすれば、留めを刺すのは愛用の杖の仕事である。
「『スキルコレクター』と『遊び人』って、こんなに相性が良かったのか……」
「〝混ぜるな危険〟ってやつだな」
「おい……あの杖もそろそろ覚醒しそうだぞ」
このままシュウイ無双で終わるのかと思われたが、
「――いえ、セカンドフェーズに移行したようです。クレイゴーレムが起動しました」




