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第百三章 裏表探石行 7.襲撃~第一波~

「……テムジンさん、どうやらお客さんのお出ましのようです」

「ふむ?」



 シュウイに言われて警戒を強めるテムジンであったが、程無くして〝お客さん〟の正体を察知する。



「……モンスターの群れか」



 やや遅れてエンジュとモックもそれに気付くが、新弟子二人と(みず)()は最後まで気付かなかった。

 自分たちを取り巻くようにして、様々な種類のモンスターがこちらへ向かっている。モンスターハウスほどの密度ではないが、種々雑多なモンスターが八方から迫って来るというのは、これは中々の脅威である……普通のプレイヤーであれば。



「上手い具合にここの背後は崖、目の前は小川になってますから、モンスターの接近する方向は限られます。守るには悪くない地形です」

「あぁ、小川を跳び越えて来るものもいるかもしれんが、それは一部の種類に限られるだろう。加えて言えば、街道に近い下流側からやって来るモンスターも少ないようだ。一見厄介な状況に見えて、実は主として警戒すべきは一方向だけ。……運営も中々凝ったシチュエーションを組んでくれる」



 モンスターの主力がやって来る側にはシュウイが迎撃に立ち、テムジンはそれ以外の方向から接近するモンスターを弓で仕留める。新人たちは邪魔にならないように温和(おとな)しくしていなさい。

 ――という合意に至ったところでシュウイが合図すると、モック・エンジュ・(みず)()の三人が掻き消すように姿を消した。仰天するテムジン工房の面々に、シュウイが事情を説明する。



「うちの新人二人は【警戒】と【隠蔽】をLv3まで育ててますし、(みず)()さんは【隠密】スキルの保有者ですから」

「Lv3……それは大したものだ……」



 ベテランとまでは言えないが、少なくとも初心者のレベルではない。シュウイがその身を以て明らかにしてきたように、SRO(スロウ)のスキルはLv3になると化ける――少なくとも使い勝手が良くなる――ものが多いのだ。Lv3にまで育てたスキルなら、ベテラン勢からも〝使える〟と評価されるのである。

 戦闘向きでない職を希望しているので、徹底的に逃げる隠れるを指導しているのだと言うシュウイに、テムジンたちは――モンスターの事も忘れて――唸るばかりである。先程まで青い顔で硬直していた新弟子二人も、好い感じに緊張が抜けたようだ。そして、そのタイミングで、



「……出ます」



 気負った様子の欠片(かけら)も見せず、愛杖を携えたシュウイがゆらりと前に出た。



・・・・・・・・



「凄ぇ……」

「何だよあれ……」



 何の変哲も無い――註.新弟子視点――棒っ切れ一本で、モンスターをサクサク(たお)し続けるシュウイを見て、新弟子二人は声も無い。同期の連中と臨時パーティを組んでモンスターを狩ろうとしていた自分たちが、急につまらない者のように思えてくる。これが強者というものなのか? 間近に迫ったモンスターたちを、杖一本であしらい(たお)しているではないか。……いや……? 時々モンスターが奇妙な動きをしているようだが……?



「【お座り】!」



 シュウイの叱咤を受けたモンスターが、戸惑ったような表情でその指示に従い……そして、数瞬とは言え動けなくなったモンスターをシュウイの杖が光に変えていく。【お座り】や【(つち)(ころ)び】、【左右】――突進中のモンスターにかけると、右足を出した後にまた右足を出そうとして、蹈鞴(たたら)を踏んだ挙げ句に転んでいた――で足並みを乱されたモンスターなど、「微笑みの悪魔」が降臨したシュウイの敵ではない。

 冷笑を浮かべて命を刈り取るシュウイに怯え狂乱したのか、肩を並べるモンスターを襲う個体も現れた……と、新弟子たちには見えているが、実はこれも【左右】の()せる(わざ)であった。シュウイの脇を駆け抜け(ざま)に一撃を入れようとしていたモンスターが、右と左を取り違えた挙げ句、隣にいた別のモンスターを攻撃したのである。理由は解らないなりに、攻撃を受けたモンスターは反撃に移り、自身の意思を裏切った行動に呆然としていたモンスターがそれをまともに食らい……泥仕合になったところをシュウイが(まと)めて仕留めていく。


 一同を瞠目(どうもく)せしめているこの鮮やかな手並みに問題があるとすれば……それは、その全てがシュウイの仕業ではない(・・)という事だろうか。


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― 新着の感想 ―
[気になる点] 【左右】はシュウイの仕業だから……?! [一言] 【隠密】さんが仕掛けてます?! ただの栽培職を目指している人かと思いきや、実は戦闘も可能なのか?人見知りなのに…。
[一言] 左右 見てた感じ、意識してた行動が反転する感じかな? 通り抜けざまに右のやつを噛もうとしてるのを左のやつを噛んでしまう 
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