第百二章 トンの町 3.微睡みの欠片亭~【メビウスの壁】~
少し短いです。
「……謳い文句のとおりなら、結構なチートスキルの筈なんだけど……まぁ、試してみれば判るよね。それじゃ……【メビウスの壁】、発動!」
思い切り良く【メビウスの壁】を発動したところで、シュウイはヘルプを読む事に成功する。間違い無く発動しているようだ。
「え~と……へぇ……本当に壁抜けができるんだ。……スキルレベルが上がりさえしたらね!」
――そう、確かに壁抜けは可能であった。スキルレベルが上がりさえしたら。
この【メビウスの壁】というスキル、確かに障壁の表と裏を往き来できる壁抜けスキルではあったが、幾つかの制約条件が存在していた。
第一に――これはレベル次第なのかもしれないが――閉鎖空間の壁には通用しない。出口のある洞窟のような半開放空間の壁なら対象となるようだが……裏側のどこに出るかは判らないという爆弾仕様になっていた。
最大の問題点は、通り抜けられる障壁の厚さはスキルレベルに依存するという事だ。Lv1では精々紙一枚、Lv3でも厚さ一センチメートルというから、効能としては微妙である。ただし、障壁の材質には関係無いようなので、Lv3で十ミリの装甲板を無効化できる――装甲板を通り抜ける事が無効化になるのかという点は措いといて――と考えればそれなりだろう。ただ、家屋の壁を通り抜けるとなると、それなり以上にスキルのレベルを上げる必要がある。成る程、これなら如何にも捨てられそうだ。
しかし! 自分には【器用貧乏】という素晴らしいスキルがある! レベルアップ何するものぞ!
――そう意気込んでレベルアップに挑んだシュウイであったが……
「……あれ?」
メモ用紙を取り出して試してみたら、指を通すのには成功した。スキルは正常に動作しているようだ。ただ……
「……レベルが上がらない?」
シュウイは【器用貧乏】の恩恵で、一度でも使用すればスキルレベルはLv3までならスイスイと上がる。……上がる筈なのに、【メビウスの壁】のレベルは1のままなのである。
「……もしかして……全身が通り抜けないとカウントされない……?」
Lv1の【メビウスの壁】で通り抜けられるのは、精々が紙一枚の厚さまで。
そして、全身が通り抜けないと経験値としてカウントされない。
ゆえに――【メビウスの壁】のレベルアップには、等身大以上の紙が必要である。
「……そんな大きな紙なんて、どこで手に入るんだよ……」
運営の仕込んだ罠に嵌まり込み、ガックリと肩を落とすシュウイ。シルとマハラが心配そうに見つめている。
「はぁ……フィールド行こ」
心優しい使役獣たちに癒やされつつ、残る二つのスキル検証のために、フィールドへと向かうシュウイなのであった。




