第百二章 トンの町 1.微睡みの欠片亭~未検証スキル問題~
今日は新人たちを引き連れて原石探しというその日、シュウイはいつもより早い時間にログインしていた。今日が日曜日だからという事もあるが、皆とキャンプに出かける前に、未確認スキルのチェックを済ませておこうと考えたのである。
未確認スキルのうち、【採集の心得】【採掘の心得】【野営の心得】については、それぞれに関わる行動が上達し易くなる、或いはスキルを得易くなるという補正スキルだと判っている。ゆえにこの場で確認する必要は特に無い。また、【伐採】は文字どおり伐採に関するスキルのようだし、これもキャンプでその効果を確かめればいいだろう。
【遊興術 初級】というのは遊び人に就職すると手に入るスキルで、場所を選ばずにゲームや手品が使えるようになるというものらしい。ナントからのメールで内容は大体判っているので、これも改めて確認する必要は無い。また、【暴発】と【ファンブル】については極力封印の方針であるが、どこかで一度は確認しておくべきだろう。とは言っても、それを今やる必要は無い。
「……けど、『遊び人』に就職したって事は、テムジンさんたちにも報告しておかなくちゃだよね。万一巻き込んじゃったら大変だし」
就職した経緯については、掲示板に上げたとおりの事を説明すればいいだろう。テムジンなら特殊鋼の件で共犯者とも言える間柄だし、余計な詮索はしない筈だ。弟子たちが好奇心に駆られても、その辺りは上手く押さえてくれるだろう。
「そうすると……当面確かめておかなきゃいけないのは……」
・【メビウスの壁】 塀の表と裏を往き来できる壁抜けスキル。
・【歌舞の心得】 歌と踊りが上達し易くなる。
・【優柔不断】 優柔不断になる。
・【モグラ叩き】 モグラ叩きのモグラを生み出す。
――の四つであろう。
このうち【歌舞の心得】については、〝単体で何かができるという訳ではないが、持っていると歌と踊りが上達し易くなる。芸能関係の職を狙っているプレイヤーには必須とも言えるスキルでありながら、未だに誰も取得した事が無く、関係各位の垂涎の的となっていた〟――という事を、以前にモックが――やや恨みがましい口調で――説明してくれた。なので改めて確認する必要は無いとも言えるのだが……
「……問題なのは、『遊び人』との相性なんだよね……」
先日ナントから送られてきたメールによると、「遊び人」という職は芸能関係のスキルを拾い易くなるようだ。なら、「遊び人」と【歌舞の心得】が同時に効果を及ぼした場合はどうなるのか……
是が非でも確認しておきたいシュウイであるが、キャンプを目前に控えたこの時点でそれを行なうのは拙いだろうという気もする。何を起こすか判らないのが「遊び人」の本分である。迂闊な事をやらかした挙げ句、キャンプができないなどという羽目になったら大問題だ。
「少なくとも、『遊び人』にジョブチェンジしての動作確認は、後に廻すべきだよね」
とは言え、これもなるべく早く確認しておいた方が良いだろう。何よりモックが興味津々の様子だし。
「……どのみち【モグラ叩き】は外に出て使ってみるしか無いんだし、その時に【歌舞の心得】も単体で使ってみればいいか」
そうすると、残るのは【メビウスの壁】と【優柔不断】だが……
「……名前からして曲者っぽいんだよなぁ……説明文も怪しいし……」




